賃金制度設計の基礎
サマリー
- 賃金とは経営者サイドから見れば「人件費管理」と「モチベーション管理」であり、従業員サイドから見れば「生計維持費確保」と「報酬ややりがい」という側面を持っています。
- 賃金は「労働対価」「生活保障」「経営合理性」「公平性」「納得性」「刺激性」の原則に基づき設計・運用されることで、「人件費管理」「モチベーション管理」が可能となります。
賃金とは何か
経営者、従業員双方にとって人事制度に対する最も大きな関心事は賃金制度ではないでしょうか。賃金とは経営者サイドから見れば「人件費管理」と「モチベーション管理」であり、従業員サイドから見れば「生計維持費確保」と「報酬ややりがい」という側面を持っています。
賃金の決定要因
賃金の上限は企業の支払い能力となります。下限は従業員の生計水準維持費となります。個別の賃金は、上限と下限のあいだで制度や交渉、世間相場との比較を通じて調整され、決定されます。
賃金制度6つの基本原則
労働対価の原則
賃金は提供する労働に見合っている必要があります。
生活保障の原則
賃金の下限は生活を維持できる水準である必要があります。地域別の最低賃金の定めを順守することはもちろんですが、生活保障という意味では従業員個々の置かれている状況にも配慮が必要です。
経営合理性の原則
経営上の合理性を持った水準である必要があります。総額人件費は会社の支払い能力で決定します。また総額人件費は賃金水準×従業員数で決まります。そして賃金水準は労働生産性×労働分配率で決まります。事業計画や利益計画に基づく人件費コントロールが経営合理性の原則です。
※参考記事→労働分配率と一人当たり人件費の関係
公平性の原則
同一基準に対して同一条件を備えた社員は、同一に扱う必要があります。その原則に乗っ取っていない場合はモチベーション管理の面から従業員に大きな負の影響をもたらします。
納得性の原則
賃金の決定ルール・賃金水準・賃金格差は、従業員が納得する条件を備えている必要があります。賃金は人等級制度や評価制度、人事考課、またそれら制度の運用により決定されます。
刺激性の原則
社員のモチベーションを向上させるためのインセンティブ性を備えている必要があります。努力し結果を出しても報われたと感じられない制度は、従業員のモチベーションに負の影響を与えてしまいます。
一般的な賃金体系
賃金には大きく「月例賃金」「賞与」「退職金」があります。月例賃金には「所定内賃金」と「所定外外賃金」があります。
所定内賃金は大きく「基本給」と「諸手当」に分類されます。基本給とは等級基準に基づく賃金であり、これが賃金の基礎となります。また諸手当とは「職務関連手当」「生活関連手当」に分類されます。職務関連手当には役職手当や業績手当などがあります。生活関連費には家族手当や住宅手当などがあります。
まとめ
賃金は労使の間で常に大きなトレードオフが発生するものです。賃金制度を設計する際には6つの基本原則を念頭におき、制度設計の最中に常に振り返りながら調整していきます。
賃金制度は人事制度3本柱である基軸制度、評価制度と連動しています。賃金はそれら各制度に基づき決定されるものです。したがって総額人件費コントロールを主たる目的とした賃金制度を再設計する場合でも、その根拠となる基軸制度と評価制度の見直しが必ず必要となります。
人事制度の全体像や基軸制度・評価制度・賃金制度の関係は、こちらの記事もご参照ください→人事制度の全体像
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