目標管理制度:3つのねらいと5つの問題点
サマリー
- 目標管理制度には、「経営参画意識の醸成」「処遇の納得性向上」「部下の自律性向上」という3つのねらいがあります。
- 目標管理制度の問題点として、「個々の目標のレベル格差」「ありきたりで低い目標設定」「長期的視点の欠如」「チームワークの阻害」「管理職の負担増加」が挙げられます。
目標管理制度とは
目標管理制度とは、個人又はグループそれぞれに担当してもらう仕事の概要を示して、期間終了までに到達すべき目標を従業員との話し合いにより設定し、仕事を推進する仕組みです。
目標設定のポイントとしては・具体的な目標・適正な目標レベルの設定・期間の設定・会社目標との関連などが挙げられます。また、部下と上司の話し合いのうえで設定した目標を、上司がその進捗をチェックし、ある程度の手法修正の裁量を部下に持たせます。
この仕組みにより、従業員の経営参画意識やモチベーションの増大、仕事や職場の問題解決能力の向上を図ります。
目標管理の3つのねらい
目標管理制度には、「経営参画意識の醸成」「処遇の納得性向上」「部下の自律性向上」という3つのねらいがあります。これらの大元を支える条件が、上司と部下の双方向コミュニケーションです。目標管理制度は、トップダウン式に一方的な目標を貸すのではなく、組織目標と個人目標を対話によりすり合わせを行い、部下の自発的な行動を促します。
ベクトルの共有
部下個人が所属する部署や、さらに大きな単位である事業部の方針を共有するためには、上司が部下に対して上位方針を明確に示し、部下に伝達することが必要です。目標管理制度は部下と上司が話し合いで目標を設定します。その際に上位方針である所属部署全体の目標を共有することで、共通目的を達成するための目標であるということを認識できます。
処遇の納得性向上
成果・業績評価の公平性・納得性を高めることは、目標管理制度を形骸化させないうえでも重要です。
目標管理制度を評価として活用する場合、部下が目標を低く設定しまうなどの弊害が起こることがあります。設定目標が、所属部門全体の中でどれくらいの貢献割合を占めているのかを部下が分かるようにする意味でも、組織目標と個人目標の擦り合わせは重要です。
個々人の役割分担と、成果責任を明確にすることで、評価の公平性・納得性を向上させます。
自律性の向上
従業員の自己管理や問題解決能力の向上を図るためには、組織目標というベクトルを合わせたうえで、出来るだけ部下自らが目標達成に向けた問題解決行動をとる状態を目指します。
部下本人の個人目標と達成までのガイドラインは上司と部下の話し合いで決めますが、その具体的な達成方法については部下本人に任せる、といった運用も効果的です。しかしこれは部下のタイプによって様々なので、リーダーシップ論の1つであるSL理論をもとに、仕事の任せ方と接し方を工夫するのが望ましいです。
※SL理論概略
目標管理制度の問題点
目標管理制度を導入している企業で良く上げられる問題点は次のようなものがあります。
個々の目標のレベル格差
各人の等級やレベルにあった目標が設定されず、目標のレベル格差が大きくなる問題です。等級制度が仕事の実情と合っていないことや、組織目標の共有が不十分な場合に起こり得ます。
目標がありきたりになる
高い目標を設定しようとしなくなる問題です。目標管理制度が評価に活用される場合、達成可能性が十分ある低い目標を設定したり、チャレンジングな目標を自ら課すという動機がそがれてしまうことが懸念されます。
長期的視点の欠如
目標管理制度で定めた短期的な成果志向に走り、長期的な視点が失われてしまう問題です。
チームワークの阻害
目標管理制度で設定した目標以外、こなそうとしなくなる問題です。
管理職の負担増加
期間ごとに面接を実施したり、進捗を定期的に確認していくこととなるため、管理人数が多い場合や目標管理制度で定めた項目が多い場合には、管理職の負担が増加します。
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