バーナードの公式組織の定義から、組織の本質を読み解く
―組織とは「2人以上の人々の、意識的に調整された諸活動、諸力の体系」である―
チェスター・バーナードは、組織をこのように定義しました。この名文を分解し言葉の意味を捉えることは、組織の本質を理解する上で非常に有効です。
特に中小企業においては組織マネジメントに課題を抱えているケースも少なくないと思います。これは①戦略やマーケティングと違い、組織活動は外部から観察しにくいこと、②誰もが組織内部の一員として活動しているものの、それゆえ組織全体の体系やダイナミズムを捉えにくいこと、が原因ではないかと思います。
バーナードが提唱した組織の定義には、目に見えない組織の概念を具体的に示しています。当記事では、この組織定義を分解し、組織運営のヒントを提示したいと思います。
諸活動・諸力
組織にはヒトが属しているわけですが、組織の構成要素はヒトそのものではなく、ヒトが提供する活動や力であるということです。ヒトには性格や価値観、信念、能力、身体など複雑な要素が多岐に絡み合っています。しかし組織の構成要素は個人ではなく、あくまで個人が提供する活動・力であり、個人と活動を区別することが重要である、ということです。
逆説的に言えば、組織を運営するには個人から組織に必要な活動・力を引き出すことが重要だということです。すなわち①モチベーションコントロール、②能力開発は、組織運営における大きなテーマとなります。
例えば、
①能力開発として、スキルマップや業務マニュアルの作成、計画的なOJT、スキル評価、評価制度、目標管理制度など、スキル開発を行う。
②インセンティブとして賃金制度だけでなく昇進昇格や表彰、信賞必罰などでモチベーションをコントロールする。
などは、組織運営における重要事項になります。
体系
体系とはシステム、制度、体制、などとも呼ばれ、その意味は「相互に影響を及ぼしあう要素から構成される、まとまりや仕組みの全体」と定義されます。組織を構成する個々の活動・力といった要素は互いに相互作用を持ち、全体としての仕組みに組み込まれるということです。それゆえに組織は個々の努力の総和以上の結果を出すことができます。
相互作用であるがゆえに、ときにそれは「コンフリクト」と呼ばれる摩擦を引き起こします。組織の構成要素が活動・力であると言っても、それを提供する参加者は感情や思想を伴ったヒトです。したがって報酬(金銭や地位などの外的報酬のほか、承認、成功、やりがい、成長などの内的報酬を含む)という個人的動機を組織に反映させるために組織・部門・個人間で利害関係の対立が起こります。
また、組織における相互作用とは、組織内部に限ったことではありません。組織は外部環境の影響を多分に受けており、外部環境との相互作用を作る必要があります。これがいわゆる経営戦略と呼ばれるものです。しかしそれは同時に、安定していた組織内部の相互作用を変革するということでもあります。組織はシステム・仕組みであるがゆえに、それを維持しようとする非常に大きな慣性が働いています。外部環境の変化に組織が応じることは組織内部のシステム(仕組み)そのものを壊し、再構築するという組織変革を意味することから大きな痛みを伴います。
意識的に調整
組織を構成する活動・力は「意識的に調整」されているということです。組織を構成する個々の諸力・力は、自由に存在して良いわけではありません。企業には目的と目標があります。そこへ至るための道標が戦略であり、戦略を実行するのが組織です。企業における組織とは理念やビジョン、目標を達成するために存在しており、組織の構成要素である活動・力はそのために発揮されるべきものです。
意識的な調整とは、具体的には以下のような「方向性の共有」と「ルールの共有」を行うことになります。
①価値観、進むべき方向性の共有
理念、社是社訓、行動規範、戦略、人材像、人事理念などの価値観を共有する
②ルールの明確化と共有
就業規則、マニュアル、権限責任規定、部門方針、事業計画、行動計画、進捗管理、報連相ルール、会議設計、目標管理、情報共有ルール
企業はこれらの方法により、活動・力の相互作用を調整し、1つの方向に向かうことで目標を達成します。
逆に普段の社員の活動が野放しになっており、日々目標に対してどんな活動をしているのかが分からなかったり、各自が勝手に自分の仕事を決めていたり、成り行き任せで仕事をしているような状態では、意識的な調整がなされているとは言えません。
「体系」として組織を仕組みとして機能させるには、共通の価値観と目的を有し、そのために活動・力を発揮するためのルールや方針や計画を明確にし、遵守していくことが求められます。
まとめ
―組織とは「2人以上の人々の、意識的に調整された諸活動、諸力の体系」である―チェスター・バーナード
から紐解く組織運営の要諦は次のようになります。
①組織の構成要素は「諸力・力」であり、それを引き出すために「能力開発」「モチベーションコントロール」が必要である。
②組織は「体系」であり仕組みである。仕組みであるがゆえに社内コンフリクトの問題及び、外部環境変化に対する仕組みの作り替え、すなわち組織改革が絶えず必要となる。
③組織は「意識的に調整される」ものである。組織の目的を達成するために「価値観、進むべき方向性の共有」と「ルールの明確化と共有」が必要となる。
古典的経営学からは現代でも普遍的に通じる気付きを得られます。是非参考にして頂ければと思います。
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