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    役割等級制度

    サマリー

    1. 役割等級制度とは、経営計画達成のための個々人の役割を階層化し、序列付けする「仕事基準」の等級制度です。
    2. 役割等級制度は合理的な評価、目標の明確化、柔軟な人事異動、総額人件費抑制のメリットがありますが反面、設計や運用の難しさや降級による社員のモチベーション低下リスクというデメリットがあります。

    役割等級制度とは

    組織における個々人の「役割」を階層化し、序列付けしたもの

     役割等級制度は、経営計画を達成するための役割を個々人に振り分け、その役割を等級化する制度です。計画達成のために期待される役割の大きさの程度(=期待役割)で序列付けされます。

     期待役割は、責任・権限の大きさ役割遂行難易度出すべき成果の大きさ(期待成果)、業績などから総合的に勘案され、その序列付けが決まります。職務価値の大きさで序列付けする職務等級制度(人基準)と似ています。違いは、職務等級制度は職務内容を細かく規定するため、等級間の職務の差異が小さく等級数も多くなるのに対し、役割等級制度は複数の職務等級を大括りでまとめ、等級間の仕事の違いが明確に分かるようになっています。職務等級に比べ等級数も少なくなります。

    ※参考記事

    人事制度の全体像

    職務等級制度

    職能資格制度

    職制や職位(役職)と等級が紐づいている

     期待役割の大きさで序列付けするため、職位と等級が紐づいています。下図が役割等級体系となります。

    役割等級体系

     係長としての役割を遂行する人が、A3またはB3等級となります。次にその係長が果たす役割を規定した役割等級基準書を簡略化した例を紹介します。

    役割等級 3等級
    職位 係長
    役割責任 課長の補佐及び部署の実務リーダーとして、メンバーの手本となりながら目標を達成する役割
    期待成果

    ・業務量

    ・業務の質

    ・部署全体の業務量と質の向上

    役割行動

    ・上長から指示された運営計画の実行と管理

    ・仕事の優先順位付けと計画、段取り

    ・優先順位に基づく部下への仕事配分

    ・担当業務全般にわたる部下への指導、助言

    ・現場業務の知識、技術レベルの向上

    ・通常業務で発生する問題を解決する

    ・イレギュラー問題について上長と相談の上解決する

    ・社内規則、ルールに違反しない

    業績責任

    ・担当部署の業績計画が完結すること

     このよう役割、責任、期待成果、行動などを等級ごとに規定します。職務記述書と比べるとだいぶ大括りなものとなります。

     特徴は、その等級や職位に求められる役割がシンプルかつ明確に表現されていることです。例えばこの係長は、その役割として役割行動の中に「部署の管理」「部下への仕事配分」「部下の育成」「自律的な問題解決」などが含まれています。これらの役割を行動として行うことが3等級の役割と定義づけられているため、例えば自らの現場業務にばかり集中して部下の育成に消極的だったり、管轄部署の問題解決を自ら図らない場合は、その役割を遂行していないということになり、降級する可能性があるということです。

    役割等級制度のメリット・デメリット

    役割等級制度のメリット

    合理的な評価が可能

     役割基準書で定められた等級ごとの役割は、経営計画に基づいて規定されています。そのため、役割を遂行することが企業の目標に結びつくため、客観的な評価判断がしやすいメリットがあります。

    目標が明確になる

     役割等級制度は期待成果、役割行動、業績目標など具体的な目標を定めることができます。そのため従業員も自身の目標が明確になり、目標管理がしやすいとともに職務が遂行しやすくなります。

    職務等級に比べ、柔軟な人事異動が可能

     職務等級は職務内容を事細かに職務記述書で規定しているため、少しでも違いのある職務に異動した場合、等級が変動することとなり、人事異動が容易ではありません。役割等級は、等級に求められる役割が職務等級に比べ大括りであるため、柔軟な人事異動が可能となります。

    職能資格に比べ、総額人件費を抑制しやすい

     役職等級制度では勤続年数や年齢に関係なく、役割の難易度、期待成果、貢献度に応じて給与が決定されます。そのため、役割を果たせなかった従業員は降級、降給となり、総人件費抑制につながります。

    役割等級制度のデメリット

    役割の設計が難しい

     役割は経営計画の達成という目標に紐づいて決定されるため、各等級の役割を設計するには戦略、企業風土や文化などを勘案した設計が必要となります。また職能資格と違い、能力があるとされていても役割を果たせなければ降級も発生するため、経営陣・従業員双方で役割を決めていくことが必要です。

    ある程度自律的組織が育っていないと運用が難しい

     役割等級は職務等級と違い、職務の詳細が記述されているわけではないため、役割行動や期待成果を達成するために、従業員にも自ら考えて行動する主体性が求められます。役割の達成方法は従業員に任されているところがあり、指示待ち社員が多い組織の場合、うまく機能しないことがあります。

    降給によるモチベーション低下リスク

    役職と等級が連動しているため、役職にあきがなければ昇級できません。また前述の通り降級も発生するため、従業員のモチベーションが低下するリスクがあります。


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