※参考記事
管理会計の代表格である部門別採算管理は、財務会計と違い企業それぞれの実情に応じてルールを決めることができます。ルールには主に「内部振替のルール」「費用負担のルール」「利益責任に関するルール」の3種類があります。
部門別採算管理制度は、単なる部門別の損益を示すだけではなく意思決定や人材評価、動機づけなど、活用の仕方次第では組織を活性化させる起爆剤ともなり得ます。
そのため、運用ルールのメリット・デメリットを理解した上で、多面的な角度から検討することが大切です。
内部振替のルールとは、社内部門間で行われる製品やサービスの受渡しを対外取引と同様に扱い、社内取引としてその条件をルール化することです。例えば製造部から営業部に対して社内で製品を販売するというケースが代表的です。
通常対外的に売り上げが発生する部門は営業部門などの限られた部門です。しかし営業部門は製造部から製品の供給を受けたり、経理部門から交通費精算サービスを受けて活動しています。つまり営業部の働きによる売上の中には、社内部門から受け取った製品やサービスの価値も含まれています。内部振替ルールは、それらの価値を提供した部門(製造や経理など)も売上や利益を作っている、という意識やコスト意識、利益責任を持たせることにより、業績向上と社内活性化を図る手段です。
内部振替は、製品やサービスの提供部門をプロフィットセンター(PC)として扱う仕組みです。提供部門から受取部門への受渡しは、社内売上・社内仕入として各部門に計上されます。
通常の企業同士の取引において、販売会社が製造会社・卸会社から製品を仕入れる時の卸価格(仕切り価格)と同じ考え方を社内の部門間に適用したものが、社内仕切価格です。
例えば製造部門をプロフィットセンターと捉えて製品を営業部門へ販売するときの価格を社内仕切り価格といいます。
会社は資産や運転資本を調達して運営されていますので、どの部門もモノやカネの提供を受けて活動しています。しかし普段部門内にいる管理職や社員が、資産や運転資本の調達コストを意識するのはなかなか難しいものです。そこで、金利負担を内部振替で各部門に負担させることで、調達コストや金利意識を高める仕組みが、社内金利の内部振替です。
経理部や財務部などのコストセンターは、金融機関などから資金を調達しています。その調達してきた資金を使っている部門に対して、使用割合に応じて金利負担をさせる仕組みです。
※内部振替のルールに関する詳しい説明はこちらをご参照ください→部門別採算管理運用ルール:内部振替のルール
在庫コストの負担や金利の負担をどのように按分するかというルールや、プロフィットセンター内コストセンター(PCC)やコストセンター(CC)のコスト負担をどのように按分するかというルールです。この費用負担のルールが確立されていないと、各採算単位の業績を正確に把握する事ができません。
具体的には、発生する費用をどの部門がどの程度負担するかというルールを決めます。例えば製品AとBの2種類を作っている会社で、A固有の部品に関しては全てA製造部門の負担となりますが、AもBも共通して使用する燃料費については、一定の基準に基づき費用の配賦ルールを作る必要があります。
費用の配賦ルールは、各採算単位の利益額に影響を及ぼしますので、ここをしっかり作ることが各採算単位の業績を正しく把握するポイントになります。
配賦基準には、各部門の人員数基準や人件費基準、売上高基準などの基準があります。
※費用負担のルールについての詳しい説明はこちらをご覧ください→部門別採算管理運用ルール:費用負担のルール
階層のレベルに応じた責任利益に関するルールを決めます。
例えば、出店計画に対する権限を持っていない2人の小売店店長がいるとします。1人は自社物件で家賃がかからないA町の店長になり、もう1人はテナント物件のB町の店長になりました。両町とも市場規模や売上は同程度です。
B町店長は就任した店舗の地代家賃や設備リース料なども含めた費用負担が生じますので、売上は同じでも利益はB町の方が小さくなります。この時、A町店長とB町店長を同じ利益額で評価したらどうなるでしょうか。2人の店長は出店計画に関して権限がないのに、配属された店舗が自社物件かテナント物件かで評価が変わってしまうことになり、B町店長にとって不利になってしまいます。このような管理不可能な費用までを評価要素に加えては公正な評価となりません。
こういった状況にならないために、費用を部門の責任者による管理可能性の点から、「管理可能費」と「管理不能費」に分類する方法があります。責任者の権限責任に応じて管理可能費までを対象にした「貢献利益」を業績責任とすることで、責任利益を明確にし、公正な評価と責任者の動機づけに繋げます。
※責任利益に関するルールについての詳しい説明はこちらをご参照ください→部門別採算管理運用ルール:利益責任に関するルール