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部門別採算管理運用ルール:内部振替のルール

内部振替のルール

内部振替のルール

※参考記事

部門別採算管理制度の運用ルール(全体像)

内部振替のルールとは

 内部振替のルールとは、社内部門間で行われる製品やサービスの受渡しを対外取引と同様に扱い、社内取引としてその条件をルール化することです。例えば製造部から営業部に対して社内で製品を販売するというケースが代表的です。

 通常対外的に売り上げが発生する部門は営業部門などの限られた部門です。しかし営業部門は製造部から製品の供給を受けたり、経理部門から交通費精算サービスを受けて活動しています。つまり営業部の働きによる売上の中には、社内部門から受け取った製品やサービスの価値も含まれています。内部振替ルールは、それらの価値を提供した部門(製造や経理など)も売上や利益を作っている、という意識やコスト意識、利益責任を持たせることにより、業績向上と社内活性化を図る手段です。

 内部振替は、製品やサービスの提供部門をプロフィットセンター(PC)として扱う仕組みです。提供部門から受取部門への受渡しは、社内売上・社内仕入として各部門に計上されます。この時の受渡し価格=仕切価格をルール化したものを、社内仕切価格といいます。

社内仕切価格

 社内仕切価格とは、部門間の製品やサービスの受渡し価格のことです。例えば次のような例があります。

・調達部から製造部門への部品販売

・製造部から営業部への製品販売

・修理部門から販売部への商品販売

 社内仕切価格をどのように設定するかはとても重要です。なぜなら社内仕切価格の決定方法によって、各部門の業績評価や、各部門の戦略策定に大きな影響を与えることになるからです。

 次の図が社内仕切価格のイメージです。

部門別採算管理社内仕切価格1

 製造原価に製造部の利益を上乗せした金額が社内仕切価格です。この仕切価格が高くなると製造部の利益が増加し、低くなると営業部の利益が増加します。

 社内仕切価格を高めに設定した場合、製造部は利益が出しやすくなります。営業部は利益を出すために極力値引きを避け、高値で販売しようとするインセンティブが働きますがその反面、外部の会社から同等の製品を仕入れたほうが仕切が安い可能性から不満につながる可能性があります。

 社内仕切価格を低めに設定すると、製造部は利益を出すためにコスト削減など効率化へのインセンティブが働きます。営業部は利益が出やすくなりますが、多少の値引きをしても利益確保されるため、値引きによる利益減少が懸念されます。

 このように社内仕切価格の決定は各部門にトレードオフの関係が生じ、また、製造、販売戦略を決定するうえでも重要な要素となります。

 したがって客観的に納得感のある社内仕切価格を決定するには、全社的な経営戦略や経営計画に基づき、共通目的を持って各部門に合意を促すことが、公正公平な業績評価を行ううえで大切です。

社内仕切価格の決定基準

 社内仕切価格を社内仕切価格の決定基準には以下のようになります。

社内仕切価格決定方法

 社内仕切価格の決定方法は、原価基準市場基準に分けることができます。

 原価基準とは提供部門のコスト(上記の例では製造原価)を基準に社内仕切価格を決めるものです。原価基準は作り手側からの発想といえます。

 市場基準とは、原価とは関係なく市場の実勢価格を基準として社内仕切価格を決めるものです。市場基準は買い手側からの発想といえます。

原価基準による社内仕切価格

 原価基準による社内仕切価格には2つの考え方があります。社内仕切価格を実際にかかった「実際原価」にするのか、もしくは標準的な原価として計算された「標準原価」とするのかです。

実際原価基準

 提供部門で実際に発生したコストを基準とするものです。

メリット ・実際にかかった原価をコスト基準にしますので、把握が簡単です。
デメリット

・実際にかかったコストが基準となるため、提供部門の利益貢献度の評価としては妥当性に欠けます。例え提供部門の効率が悪くコストがかさんだとしても、そのコストがそのまま受取部門に転嫁されますので、両者の公平な評価ができません。

・また事業計画を立てる際に、実際にかかったコストを計画値としては、コスト削減へのインセンティブが働きません。

標準原価基準

 提供部門から受取部門への社内仕切価格を標準原価とするものです。標準原価とは、製品の材料や製造労働力の消費量について科学的・統計的調査に基づいて算定されたものです。標準原価に対して実際原価が下回っていれば、効率的にコスト削減が進んでいるということであり、実際原価が上回っていれば、効率化を要すると判断されます。

メリット

・標準原価を基にした社内仕切価格が受取部門に転嫁されるため、提供部門の効率の良否により生じた実際原価を受取部門に転嫁することを避けることができます。

・提供部門は標準原価と実際原価の差異が自部門の損益として評価されるため、効率化やコスト削減へのインセンティブが働きます。

デメリット 製品によっては標準原価の決め方が難しいものがあります。また、サービスの場合はさらに標準原価の決め方が難しいケースがあります。サービスはヒトのスキルにより品質もスピードも大きくバラつくため、標準原価の測定は複雑になります。

利益の上乗せ

 実際原価基準、標準原価基準いずれにおいても、それぞれの原価基準に一定率の利益を上乗せすることもあります。この利益はあくまで社内取引上の利益になります。標準原価基準による製品の売上総利益率が40%だった場合に、その売上総利益率を製造部と営業部で折半するというルールにした場合、売上総利益率を20%ずつ分け合うということになり、提供部門への上乗せ利益率は売上の20%となります。

 利益上乗せのメリットは、会社全体で利益が増加したときに提供部門(製造部門)と受取部門(営業部)どちらの頑張りがどれくらい利益に貢献したかがわかり、部門に対する公正な評価が行えるということです。

 製造部ではコスト削減をして標準原価と実際原価に有利差異が生まれれば、製造部の利益を増加させることに繋がります。また営業部では値引きを抑制することで営業部の利益を増加させることに繋がります。

市場基準による社内仕切価格

 市場で売価が定まっている製品や原材料の場合、市場での価格水準を仕切価格とすることができます。

実勢価格基準

 客観的な市場実勢価格が存在する製品の場合、その価格を基準に仕切価格を決定する方式です。

メリット 市場実勢価格であるため、判断基準が明確で社内仕切価格を決めやすいです。
デメリット 一品ものの部品や製品など、市場実勢価格がないものではこの方式は使えません。また、市場価格の変動が激しいものは、仕切価格変更が頻繁になり、運用が難しくなります。

売価掛け率基準

 外部販売価格が比較的安定している商品やサービス、定価が定まっている製品サービス(カタログ価格)で使える方式です。外部販売価格に一定の掛け率を乗じて社内仕切価格を決定します。

メリット 市場での価格が反映されているため、提供部門のコスト削減意識が高まります。
デメリット 定価(カタログ価格)という概念がない製品には使いにくく、サービスの場合その傾向がより顕著です。

その他のルール

内部取引相殺

 部門別採算は、最終的に合算されて企業全体の業績を表す損益計算書に統合されます。その際社内取引分を消し込む必要があります。そうしないと、実際の売上高や仕入れ価格に社内売上金額や社内仕入金額も加算され、実際の売上よりも大きくなってしまうことになるからです。

未実現利益の消去

 社内取引仕切価格を利益上乗せにした場合で期末に在庫が残った場合、その残った在庫分は製造原価(あるいは仕入原価)で評価します。なぜなら、外部取引が実現していない限り提供部門の社内売上も実現しないからです。期末時点において受取部門の期末在庫を内部利益相当額を評価減し、提供部門の社内売上を同額減らす処理を行います。

部門別採算制度のその他の記事は、こちらからご覧ください。

 

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