賞与:賞与原資額の決め方
2020/4/1記事投稿
2020/9/4加筆・修正
賞与の性格と特徴
賞与には3つの性格があります。
【賞与の性格】 ・生活補填的賃金(賃金の後払い的性格) ・功労報奨金(業績配分という性格) ・景気変動調整機能 |
自社の賞与体系において、これら3つの性格の中でどの側面を強めるのかは、「総額賞与原資の決定方法」と「配分方法」により決まります。
●賞与の性格=総額賞与原資の決定方法×配分方法 |
当記事では「総額賞与原資の決定方法」についてご紹介します。
※「配分方法」については、「社員への賞与原資の配分方法」記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
賞与原資額の決定方式
固定費方式
業績に関係なく固定費的に賞与総額原資を決定します。賞与の性格としては生活補填的賃金という側面が強まります。
- 賞与総額原資への影響:なし
賞与総額は一定額で固定されているため、賞与総額原資への影響はありません。業績が良かろうと悪かろうと賞与総額は変わらないため、従業員から見れば安定度のある賞与体系となります。 - 営業利益への影響:大
業績が良い場合は人件費比率が低下し営業利益が大きく増加しますが、半面、業績が悪化すると固定的な人件費支出が発生するため、営業利益が大きく減少します。
売上高連動方式
賞与総額原資を売上高と連動させる方式です。賞与の性格としては、景気変動調整的な性格が強まります。
- 賞与総額原資の変動:中
賞与総額原資は、売上高が上がれば増加し、売上高が下がれば減少します。 - 営業利益への影響:中
売上が上がった場合は増加しますが固定費方式ほど増加しません。逆に売上高が減少した場合、営業利益の減少幅は固定費方式より軽減されます。
営業利益連動方式
賞与総額原資を営業利益と連動させる方式です。賞与の性格としては、功労報奨金としての性格が強まります。
- 賞与総額原資の変動:大
営業利益に連動するため、売上高連動方式に比べて大きく増減します。業績が良ければ従業員は多くの賞与をもらえる反面、業績が下がればもらえる賞与額は小さくなります。インセンティブ性の高い方式といえます。 - 営業利益への影響:小
営業利益が小さければ賞与総額も小さくなるため、経営リスクは低いです。反対に営業利益が増加した場合は賞与総額も連動して増加するため、営業利益は圧縮されます。
まとめ
人口減少、生産年齢人口減少、ニーズの多様化、環境変化の不確実性の高まりという昨今の実情を考えると、固定的に賞与額が決まる規定は避けたほうが良いでしょう。
賞与の性格もこのような時代背景により、「生活補填的性格」から「功労報奨金的性格」の側面がかなり強まっています。
売上高連動方式は仕組みとして分かりやすいというメリットがありますが、粗利益率や固定費を無視した売上高至上主義に陥る危険性があり、もしこのような事態になった時には利益に対する賞与負担の割合が非常に重たくなります。
営業利益連動方式は、賞与前利益で黒字が出ていれば絶対に赤字にならないというメリットがあります。したがって企業の成績という側面で言えば最もリスクの低い方式と言えます。インセンティブ性が高くなりますので、従業員の向上意欲を高めるという意味でも活用しやすい方式です。反面、生活補填的性格は後退し、社員の生活の安定度は下がります。
賃金制度の改定は、人事制度改定の中でも非常にデリケートな部分であるため、いきなり大幅な変更すると社員が抵抗したり混乱することになります。しかし賞与部分に関しては比較的改定がしやすく、基本給のそれに比べて遥かに社員からの理解も得られやすいです。
総額人件費管理と従業員のモチベーション管理を推進するには、まずは賞与の決定方法の改定から着手することをお勧め致します。
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