賞与:社員への賞与原資の配分方法
2020/4/1記事投稿
2020/8/31加筆・修正
賞与の性格と特徴
賞与には3つの性格があります。
【賞与の性格】 ・生活補填的賃金(賃金の後払い的性格) ・功労報奨金(業績配分という性格) ・景気変動調整機能 |
自社の賞与体系において、これら3つの性格の中でどの側面を強めるのかは、「総額賞与原資の決定方法」と「配分方法」により決まります。
●賞与の性格=総額賞与原資の決定方法×配分方法 |
当記事では「賞与の配分方法」についてご紹介します。
また近年、賞与配分方式のスタンダードとなりつつある「ポイント方式」について詳しくお伝えいたします。
※「総額賞与原資の決定方法」については、賞与:賞与原資額の決め方記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
賞与原資の配分方法
基本給連動賞与
基本給連動賞与は、各社員の基本給に倍率(月数)を掛けることで個々の賞与額が決定する方式です。
【基本給連動賞与】 (基本給+役職手当)×倍率(月数)=賞与額 |
この方式は基本給によって賞与額が決定するため、等級の高い社員ほど賞与額も高くなります。したがって職能資格制度を採用していたり、年齢給や勤続給のウェイトが大きい基本給体系の場合は年功的な運用となります。その意味で基本給連動賞与は生活補填的賃金という性格が強いと言えるでしょう。
長期的に業績が拡大することが前提かつ、長期的視点で人材を育成したい方針である場合には有効性があります。
しかしかつてのような経済が右肩上がりで推移する時代ではなく、環境変化の速さで安定的な企業成長が難しくなっている昨今、基本給に連動する賞与は経営リスクを高めることにつながります。また、社員の高齢化に従って賞与支給総額が膨れ上がり、経営を圧迫することに繋がる可能性もあります。
さらに、年功的な運用となりがちなため、優秀な若手社員に不満が蓄積し、人材流出や人手不足の原因になることも考えられます。
業績連動賞与
業績連動賞与は、会社の業績や個々の業績が賞与に反映される仕組みです。賞与の性格としては功労報奨金的かつ、景気変動調整的な性格となります。
率方式と額方式
【率方式】 基準額(基本給+役職手当)×支給率(月数)×成績係数=賞与額 【額方式】 等級月定額×支給率×成績係数=賞与額 |
いづれの方式も、基本給連動賞与に成績係数を掛けて賞与額を決定するという考え方です。同一等級、同一賃金であっても、成績によって賞与額に差がつくという意味では、基本給連動賞与に比べて年功的要素が排除される形になります。
ポイント方式
ポイント方式とは
ポイント方式とは業績連動賞与の1つです。会社の業績により決定した賞与原資に基づきポイント単価を定め、各社員へ成績に応じたポイント数を割り振り、個々の賞与額を決定する方式です。
イメージとしては次のようになります。
【個々の社員の賞与額】 ポイント単価×成績別ポイント数=個々の社員の賞与額 【ポイント単価】 賞与原資÷ポイント総数=ポイント単価 |
ポイント方式のメリット
この方式は、賃金が経営上果たす役割である「総額人件費管理」と「モチベーション管理」を実現できる方法です。
例えば賞与原資を「賞与支給前営業利益の○○%」というように準拠指標を決めることで、賞与原資を会社の業績と連動させることができ、総額人件費管理が可能となります。
また、個々の社員のポイント数は個々の社員の成績に応じて決まりますので、より高い成績を出そうというインセンティブが働き、モチベーションを高めることに繋がります。
ポイントテーブル
個々の社員のポイント数は、ポイントテーブルに基づいて決定されます。次のようなポイントテーブルを策定します。
例えば5等級の社員がA評価を取った場合、ポイント数は134ポイントとなります。
具体的な計算事例
では具体的に、5等級A評価を取った社員Xさんの賞与がどのように決定するかを説明致します。
まずある半期において全社員の評価を行った結果、ポイント総数が4,000ポイントだったとします。そしてこの半期の営業利益をもとに算出された賞与原資総額が2,000万円だったと仮定します。
このときポイント単価は次のようになります。
【ポイント単価】 2,000万円(賞与原資)÷4,000(ポイント総数)=5,000円(ポイント単価) |
したがって、5等級でA評価を取った社員Xさんの賞与額は次のようになります。
【Xさんの賞与額】 ポイント単価5,000円×134ポイント=670,000円(Aさん賞与額) |
まとめ
ポイント方式は、総額人件費管理とモチベーション管理双方を可能とする便利な配分方法です。総額人件費管理面では、賞与原資を期ごとの業績に連動させることで経営圧迫を防ぐことができます。またモチベーション管理面においては、社員みんなで頑張って成果を出せば、賞与原資もポイント単価も大きくなります。
賃金制度の改定は、人事制度改定の中でも非常にデリケートな部分であるため、いきなり大幅な変更すると社員が抵抗したり混乱することになります。しかし賞与部分に関しては比較的改定がしやすく、賞与の業績連動性を高めることは、基本給のそれに比べて遥かに社員からの理解も得られやすいです。
総額人件費管理と従業員のモチベーション管理を推進するには、まずは賞与の決定方法の改定から着手することをお勧め致します。
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