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    職務規定・部門責任偏重の弊害

     テレワークの促進や多様な働き方への対応から、ジョブ型雇用を採用する企業が大手中心に増加しています。ジョブ型雇用は、その規定している専門分野についてスキルアップが図りやすいこと、そして職務規定に定められた職務を果たせれば多様な働き方を実現できるメリットがあります。責任範囲が明確化されることから、評価の公平性が高いというメリットもあるでしょう。

     これと同様の効果をもたらすものに部門別採算制度があります。これも部門の役割責任と達成目標を明確にし、部門内における責任明確化、特定分野のスキルアップ、目標達成インセンティブを与えるものです。

     しかし反面、これらの制度に過度に偏重すると、企業経営全体に対するデメリットも生じます。

    1.  組織の機動力が失われること
       ジョブ型雇用も部門別採算制度も分野内の仕事と目標を規定するものです。これはある時点での仕事の効果効率を高めるという意味では高い威力を発揮します。しかし市場環境は絶えず変化しています。組織は市場環境の変化に対応出来なければ生き残れません。市場成長率・ニーズ・競合の動きが変われば、自社リソースの取捨選択と再配分をする必要があります。その時に明確化された職務規定が足かせとなり、環境変化への対応が遅れる、あるいは対応出来なくなります。
    2.  部門間連携が悪くなること
       ジョブ型雇用や部門別採算は企業経営における内部体制をジョブ/部門別に細切れにして管理する管理手法です。そのメリットは既に述べた通りですが、日常業務における最大の弊害は部門間連携に不具合が生じることです。

     これは多くの経営者、管理職が実感していることだと思います。そしてなぜ部門間連携が悪くなることが大きな問題なのか、そしてなぜ部門間連携が悪くなるのかについて、もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。

    顧客への提供価値は、バリューチェーン全体のアウトプットである

     ジョブ型雇用や部門別採算制度は、運用方法を間違うと部分最適に陥る可能性があります。そして「顧客の要求に応える」という企業目的を忘れ、部分最適活動が重視されるリスクがあります。

     企業は限られたリソースを有効活用し、ターゲット顧客に対する価値提供を行っています。企業活動において、顧客への価値創出に無関係な活動は一切ありません。直接利益を生まない間接部門も、利益を生む直接部門を後方支援しています。

     別の言い方をすれば、顧客への提供価値は企業活動全体の総和であるということです。調達、加工/生産、販売/マーケティング、出荷/集荷、アフターサービスといった一連の流れ全てが顧客価値を生み出します。企業内におけるこれらの個別活動の連鎖をバリューチェーンといいます。

     バリューチェーン上のどの活動に企業の強みがあるかは経営戦略によって変わります。これは同業界の企業同士であっても違ってきます。しかしどの企業にとっても必ず重要になる要素は、活動間の連絡/連携がスムーズに運ぶかどうかということです。なぜなら顧客が受け取る価値は、企業内のバリューチェーンを経て生み出されたアウトプットだからです。

     しかしバリューチェーン全体ではなく個別活動が優先され、価値連鎖が分断され、顧客への要求に応えられないケースが多く見受けられます。

     例えばある製造小売業の例。新規顧客獲得のため、直販店での催事用に商品群Aを通常時以上に展示する必要があります。販売部門は催事用のイベントや商談スケジュールを組んでいます。しかし製造部門は自部門に課せられた商品ラインの生産に今まで通りの時間を割いています。販売部門では必要な商品群Aがいつ展示できるのか、あいまいな情報しかもらえません。そうこうしているうちに製造部にも経営幹部から商品群Bの生産増強指示が飛びます。あわてて商品群Aを作るために資材部は材料を入荷し、製造部も猛スピードで生産。さらに出荷時に部門間トラブルが発生し、何とか体裁だけは繕ったものの、店頭展示物に品質不良が発生し、顧客への売れ行きはイマイチ。その後倉庫を見てみると、商品群Aのいくつかのアイテムに仕掛在庫があったことが発覚(催事以前から作っていた仕掛在庫)。。

     催事の度に毎回このような混乱が発生します。これが職務規定や部門別管理の行き過ぎでバリューチェーンが分断されているケースです。結果的に顧客に満足いく価値を提供出来ず、収益性も下がるという結果になります。

     このケースの問題は次の通りです。

    1. 顧客の要求に応えるという企業の大目的を忘れている
    2. 部門別の縦の指令系統が重視され、顧客価値は横の流れで生み出されることを忘れている

    部門間連携の標準化方法

     これらの問題を解決するには、2つのことに取り組む必要があります。

    1. 企業の大目的と全社方針の伝達を徹底すること
       企業の目的と全社方針の伝達は、社長自らが行う必要があります。これを可能にするツールが「経営計画」です。理念・全社目標・方針が全て言語化されている経営計画を用い、方針を繰り返し伝達し、これに基づいた活動の予実チェックを実施します。経営計画に謳われる方針は、当然ながら部門最適ではなく企業の顧客ニーズを満たす全社最適に基づく方針です。
       上記例で言えば、商品群Aは(例え現在の売上は小さくても)自社の未来にとっての優先商品群であり、これを促進していくという方針が徹底されておらず、この成果を図る指標も設定されていないことが問題でした。ゆえに製造部は自身の目標を達成しやすい(今現在の)売れ筋商品の生産を続けてしまったということです。
       これは部門別採算を取り入れる会社によく起こる問題です。部門別採算を導入するには、単なる数値責任だけの話ではなく、全社方針と部門に求められる役割が正しく伝わり、それが評価される制度になっている必要があります。
       このような部門別採算管理制度設計の要諦はこちらの記事(部門別採算管理制度)で紹介しておりますのでご参照ください。
    2. ジョブを横の流れで捉え、財・情報・金銭の流れを規定した業務フロー規定を作ること
       繰り返しになりますが顧客価値を起点として考えた場合、ジョブはバリューチェーン全体にまたがります。そのため部門間の財・情報・金銭の受渡しが確実かつ迅速に行われることが求められます。したがって横の流れに焦点を合わせた業務フロー基準を作り、これを実施することが必要となります。
       財の受渡しとはサービスや商品のフロー規定、情報の受渡しとは伝票や要求書のフロー規定、金銭の受渡しとは文字通り金銭授受のルールを定めたものです。
       これらを規定することで、次の3点を明らかにします。

      ⅰ)仕事全体の流れを明確にする
      ⅱ)財・情報・金銭の取扱いに関する担当者・業務・ルールを明確にする
      ⅲ)各担当者の業務の責任転移点を明確にする

       前述のケースでは、催事という平時とは違う活動によって通常の仕事の流れでは処理できない事案が発生していました。それは突発生産指示、出荷作業、仕掛品確認でした。
       突発生産指示は、そもそも催事全体の計画が立てられていないことが原因でした。
       出荷作業は、催事会場の関係で通常時の販売部/製造部間の財の受渡し規定が適用できず、「どちらの部門が運送手配を行うか」で時間ロスと手続きトラブルを起こしました。
       さらに後々、特定アイテムの仕掛在庫があったことが発覚し、無駄な材料費と加工費が発生(納期遅延を起こさなかったのが救い)したのは、製造部内で商品群Bの認識違いにより、会社が意図する商品群Aのアイテムが在庫管理係に正しく伝わらなかったからです。今回の催事における商品群とは通常管理している商品ラインのうち1つのラインを中心とし、そこに他の商品ラインからいくつかのアイテムを組み合わせた催事向けの商品群でした。しかし部門間/部門内での伝言ゲーム中にいつのまにか特定の商品ラインの在庫確認に話がすり替わってしまい、在庫管理係はその仕掛在庫を報告したため漏れてしまったということです。

     この催事は内容は不定時かつ内容は毎回変わるものの、確実に毎年実施されている性格のものでした。また顧客へのインパクトもそれなりのものです。たとえ通常業務ではなくとも、このようなジョブは顧客価値に影響を与えるものとして捉えるべきです。

    まとめ

     社内における多くの規定が「特定の部門内・ジョブ」に限定されたものになっています。これは平時通常の業務を回すには最適化された規定と言えます。しかし自社が定めた事業領域内にいる顧客の要求は、たとえターゲティング精度が高く顧客属性が似通っていたとしても、千差万別です。顧客に応えようとすれば必ずイレギュラーや通常規定していない問題は発生します。これに応えて顧客満足度を高めていくには、顧客への提供価値を起点とした部門横断ジョブとして捉え、横横断の業務フロー規定を作ることが有効です。しかしこれはそれほど難しいものではなく、

    ⅰ)仕事全体の流れを明確にする
    ⅱ)財・情報・金銭の取扱いに関する担当者・業務・ルールを明確にする
    ⅲ)各担当者の業務の責任転移点を明確にする

    というポイントを抑えたうえで業務フロー規定を定めれば、多くの場合で解決します。

     市場環境が目まぐるしく変わるということは、顧客の要求の変遷や価値観の多様化を意味し、「顧客に価値をもたらすイレギュラー業務」が多々発生することを意味します。これを「現場が混乱する」「そのようなイレギュラー要求に我が社では対応しない」とするのか、それとも「イレギュラーでも当社顧客への提供価値の増大に繋がる」と考えて社内の業務フロー規定を磨き上げていくのか・・・経営判断が問われる部分です。

     以上、職務規定や部門責任は偏重しすぎると市場変化に対する機動力を失い、突発的イレギュラー要求に応えにくくなる、これを解決するには顧客要求に応えるためのジョブをバリューチェーン全体に罹るものとして捉え、そのジョブごとに業務フロー規定を定めることをお伝えしました。

     


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