キャッシュフローと経営の型
キャッシュフローのパターンから経営の型を把握する
過去5年分ほどのキャッシュフロー計算書を作成できたら、その資料を基にキャッシュフロー分析を行います。キャッシュフロー計算書が物語るものは、過去の「おカネの稼ぎ方」と「おカネの使い方」です。おカネの稼ぎ方は主に営業活動によるキャッシュフローに反映され、おカネの使い方は投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローに反映されます。
※参考記事→キャッシュフロー経営
※参考記事→キャッシュフロー3つの区分
※参考記事→キャッシュフロー計算書の作成方法
そしておカネの稼ぎ方と使い方のパターンから、経営の型を分析していきます。下図は、キャッシュフローのパターンと経営の型をまとめた図表です。
バランス型
営業CFでおカネを稼ぎ、稼いだ分で投資と借入金返済を行っているパターンです。一般的には最も好ましいパターンと言えます。
財務改善型
営業CFでおカネを稼ぎつつ、設備等の売却によりキャッシュを作り(投資CFのプラス)、得られたキャッシュで借入金返済を行っているパターンです。一時的な財務改善という意味では望ましいですが、資産売却が今後も続くと営業CFを生み出す競争力が低下する恐れがあります。無駄な資産売却後の競争力強化のための投資計画が必要となるでしょう。
投資型
営業CFの稼ぎに加え、資金調達(財務CFのプラス)を行い、得られたキャッシュで投資を行う積極戦略パターンです。投資の翌期以降、投資キャッシュフローに見合った営業キャッシュフローを生み出しているかが分析ポイントになります。
成熟期型
キャッシュフローの動きが小さいパターンです。事業が成熟して利益の規模、投資の規模が小さいことを表します。
導入・成長期型
スタートアップ、ベンチャー企業に多いパターンで、資金調達を行いながら将来のために先行投資を積極的に打ち出しているパターンです。営業CFはまだ小さいか赤字で、現在の投資を将来の営業CFで回収できるかがポイントです。
破綻型
営業CFが赤字で、その赤字分を資金調達で賄っているパターンです。金融機関からの資金支援が途絶えると資金ショートすることになります。
キャッシュフローのパターンと事業計画
キャッシュフローのパターンとしては「バランス型」が最も健全な財務状況を示しています。したがって中長期的に見た場合にはバランス型に収束していくような事業計画を立てていくのが望ましい姿と言えます。しかし、これは事業戦略や会社の置かれている環境で、その時々で何が良い型なのかは変化します。
例えば経営再建の道のりでいきなりバランス型を実現するのは非現実的です。まずは財務改善型のキャッシュフローでの事業計画を策定し、債務超過解消や債務償還年数目標が達成できた段階で、バランス型を目指した事業計画に取り組む方が計画の実現可能性が高まります。
また、新たな成長が期待できる新市場への参入であれば、積極的な投資により市場規模拡大とシェアの獲得に乗り出すダイナミックな戦略を優先したいところです。市場の急成長が見込める期間は投資型や導入・成長期型の積極的な資金調達と投資による事業計画を策定し、市場成長率が落ち着いたころにバランス型っを意識した計画に移行していくことで、初期投資の効果を大きなリターンに変えることができます。
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