仕事の重要度・期間と、雇用形態の関係
人件費の変動費化による収益体質の強化を図るには、雇用形態別の人員構成の検討が必要です。当記事では、社員の雇用形態を決める判断基準について「仕事の重要度」と「期間」の2軸で解説します。
雇用形態を検討には、仕事の「重要度」と「期間」による分類が必要
重要度軸
仕事の重要度には「業界全体にとっての重要度」と「個別企業にとっての重要度」があります。
業界全体にとっての重要度の高い業務領域とはKFS(重要成功要因)よ呼ばれます。ある業界での「勝つための絶対条件」を指します。例えばコンビニであれば高回転率と機会ロス・廃棄ロスを低減させるための「物流」がKFSに該当します。またアパレルであれば流行り廃りの激しい中で波に乗り降りできる「生産の柔軟性」がKFSと考えられます。
個別企業にとっての重要度の高い仕事とは、その企業独自の競争優位性に直接かかわる仕事を指します。アップルであれば「親しみやすいユーザーインターフェース」、富士フィルムなら「マイクロレベルの技術」などが該当します。
上記に挙げた「業界全体」「個別企業」にとって競争優位の源泉となる仕事であるか、そうでない仕事か、が仕事の重要度軸となります。
期間軸
仕事の重要度には期間という視点があり、中長期的なビジョンを達成するために重要な仕事と、短期的な成果を達成するために重要な仕事があります。
長期的に重要な仕事は企業の中核能力として存在し、経営理念や組織風土にまで影響を与えます。短期的に重要な仕事は一時的なプロジェクトのような形で実行されます。
仕事の重要度軸・期間軸による雇用形態
仕事の「重要度」「期間」をマトリックスにし、雇用形態を当て込むと下表のようになります。
短期成果重視型
短期的に重要度が高い仕事を指します。事業承継・抜本的業務改善・特定商品の重点的な販売強化など、期限付きのプロジェクト単位で時限的な成果を追求する仕事です。短期的成果重視型に該当する仕事は、「業務提携・契約社員・派遣社員・再雇用委託・外部専門家活用」など、時限付きの形態で人材を調達することが望ましいと言えるでしょう。
留意点は、短期成果重視型の仕事は問題が大きく見えるため、「大きな仕事=正社員」というイメージによって安直に正社員登用に走ってしまわないようにすることです。
中長期的な経営計画の中で、今重要である仕事の位置づけが今後も重要足り得るのかは十分検討することが必要です。
短期職務限定型・長期職務限定型
自社にとって重要度がそれほど高くない業務や、業務量に繁閑差や季節変動がある場合については、パートやアルバイトなどのフロー型人材の活用を検討しましょう。
重要度がそれほど高くない業務の見極めが必要で、どのような業務が重要度を低いとするかは会社によって大きく異なりますが、意外と「お金」「企画」など企業の中核を担う業務をアルバイトに担わせているケースがあります。
入出金・帳簿記入・銀行印の管理などは、どんなに信用できる人物であってもアルバイトに任せるべきではないでしょう。もちろん社長・社長の奥様・信頼のおける正社員の管理の元で付随業務を担ってもらうのは問題ありませんが、ダブルチェック体制を整えておくなどは必要です。
また企画は企業の中核能力がアウトプットとして反映される場です。会社によって製造・営業・物流など強みは様々ですが、それらをサービスに反映して業績向上を図る設計部隊である企画は、次に紹介する長期キャリア開発型業務として、正社員に担わせるべき業務です。
長期キャリア開発型
中長期的に見て重要度が高い仕事には、長期キャリア開発をみこした正社員を配置していきましょう。上述した業界における競争優位性の源泉となる仕事、企業の中核能力に関わる仕事などは、企業の持続的競争優位を形成する大切な仕事です。
そして忘れてはならないのが、マネジメント・リーダーという「仕事」です。マネジメント・リーダー人材とは管理職層・経営層として会社全体を理解し、中長期ビジョンと戦略を策定し、会社という船を1つにまとめ方向付け、動かす存在です。どんなに素晴らしい能力を持つ社員がいても、それらを適材適所に配置し、有機的に結合させ、1つの目指すべき方向に力を集約させていかなければ、望む結果は手に入りません。
このマネジメント層こそが企業の中核能力であり、ピーター・ドラッカーは「トップマネジメントの仕事以外は、全てアウトソーシングできうる」とまで述べています。
長期キャリア開発型では、特定業務における卓越した専門職、企業の未来を方向付け先導するマネジメント人材という2つの視点から、中長期的な正社員登用を検討します。
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