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    人事理念

    サマリー

    1. 人事理念とは、経営戦略実行のための人材マネジメントの基本的な考え方を示したものです。
    2. 人事理念は、経営理念・経営戦略と人事制度を有機的かつ整合性を持って繋ぎ合わせる連結機能を持っています。
    3. 人事理念には、大きく「価値観・哲学」「行動指針」「育成方針」「基本的人事方針」といった4つの視点が盛り込まれます。

    人事理念とは

     人事理念とは、経営戦略実行のための人材マネジメントの基本的な考え方を示したものです。人事理念は、経営理念・経営戦略と人事制度を有機的かつ整合性を持って繋ぎ合わせる連結機能を持っています。

    人事理念

     ※人事制度の体系はこちらの記事もご参照ください。

    人事制度の全体像

    人事制度を設計する前に考えること

     経営理念を掲げている企業様は大変多くいらっしゃいますが、この人事理念を明文化して掲げてらっしゃる企業様は少ないのではないでしょうか。経営理念は企業の存在価値そのものを表す概念ですが、人事理念は最大の経営資源であるヒトが、企業の存在価値のためにどうあるべきかを明確にするものです。

     経営者様とお話していると、企業様にとって必要とされる人材像が経営者様の頭の中で驚くほど明確になっていることを感じます。その人材像の是非は別にしても、日常業務に忙殺される中で社内に人材像を浸透させることは難しいものです。 経営理念と同じく、人事理念についても「明文化」→「共感」→「内在化」という信用・定着プロセスを図ることが大切です。

    人事理念に盛り込まれる4つの視点

     人事理念には概ね、

    1. 価値観・哲学
    2. 行動指針
    3. 育成方針
    4. 基本的人事方針

    4つの視点が盛り込まれます。

    人事理念4つの視点

    価値観・哲学

     企業の価値観を明示したもので人事理念を総括しており、人事理念の上位概念である経営理念にも謳われます。人材に求める根源的価値観であり、次のキャノンの例のように、主義としてまとめられることも多いです。創業精神を踏まえ、時代を超えた普遍的な価値観として威厳を持って表現されています。

    三自の精神:自発・自治・自覚の三自の精神をもって進む
    実力主義:常に行動・専門性・創造力・個性を追求する
    国際人主義:異文化を理解し、誠実かつ行動的な国際人をめざす
    新家族主義:互いに信頼と理解を深め、和の精神をつらぬく
    健康第一主義:健康と明朗をモットーとし、人格の涵養につとめる

    行動指針

     行動指針とは、経営理念や戦略を達成するために社員としてどのような行動・態度をとるべきかを定めたものです。行動指針は具体的であり、社員はもちろんのこと、入社を考える人にとっても、どのような行動が望まれるのかが分かりやすく表現されます。

     ソフトウェア会社のサイボウズは、行動指針を「Action5」と名付けて社内に行動指針を浸透しています。

    理想への共感(やる):理想に共感し、理想に向かって課題を実行する
    あくなき探求(考える):問題を深く探求し、課題を設定する
    知識を増やす(知る):役割を果たすために必要な知識を身につける
    心を動かす(伝える):周囲の協力を得るためにコミュニケーションを行い、相手の行動を引き起こす
    不屈の心体(続ける):任された役割をやめずに取り組み続ける

     行動プロセスをとても簡潔に分かりやすく表現しています。企業の価値観・哲学は行動によって外部に見える化され、成果に繋がります。行動方針を定めることは人事理念の中でも重要な事です。

    育成方針

     育成方針とは、経営理念や戦略の実現に向けて、どのような力を持った社員を育成していくか、裏返せば社員に求められる能力を明示したものです。

     化粧品製造・販売の資生堂は、昔から大変熱心に人材育成を行う企業として知られています。同社は「“魅力ある人”で組織を埋め尽くす」実現に向けて、

    ・「資生堂人としての魅力(美意識)」

    ・「実行する力(自立性)」

    ・「変革する力(変革力)」

    という 3 つの「力(=能力)」を育成するテーマとして掲げています。

     行動方針を達成するためには知恵や能力が必要です。どのような能力が必要とされるのかを表現したものが育成方針です。

    基本的人事方針

     人事理念のなかで、基本的な人事制度の方針を打ち出したものです。アサヒグループの例をご紹介します。

    1.挑戦・革新社員に対し、成長と能力発揮の場を提供する
    ⇒自ら挑戦し続ける意欲の高い革新社員に対して、業務に合わせて多様な成長と能力発揮の場を積極的に提供していきます。「失敗を恐れず自ら変わろうとすること、行動を起こそうとすること」を賞賛し、意欲に応えていきます。
    2.能力を十分に発揮し、やりきり、成果を上げた社員に厚く報いる
    ⇒自らの業務に強い責任感を持ち、能力を高め、業績向上に向け、それぞれの目標に取り組み、それを完遂し成果を上げた社員に、厚く報いていきます。
    3.社員の成長を推進し、グループ全体の競争力を向上させる
    社員の能力を高め、その能力の発揮を推進することにより、少数精鋭化を実現し、グループ全体の競争力を強くしていきます。
    4.雇用確保に努める
    人材流動化、適材適所を促進し、グループ全体で、雇用の確保に最大限努めます。

     基本的人事方針は、人事制度が統制する「採用」「配置・異動」「評価」「能力開発」「処遇」が明文化されたものです。企業が人材に期待することや人事政策、評価や処遇の在り方が表現されています。

    まとめ

     人事理念は経営理念・経営戦略と、最大の資源である「ヒト」を結ぶ連結機能です。大きく「価値観・哲学」「行動指針」「育成方針」「基本的人事方針」といった4つの視点が盛り込まれます。この人事理念に基づき、マネジメントや人事制度が構築されることで、経営理念や戦略と有機的かつ整合性を持った、戦略達成に向けた組織基盤が構築されます。

     人事理念は、強い組織を作るために是非お考え頂きたい重要項目だと思いますので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。

     


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