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PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは

 PPMとは企業が複数の事業を行う場合に、各事業に対する経営資源の配分が最も効果的となるよう、事業ごとの立ち位置を分析する手法です。

 キャッシュフローの観点から事業への最適な経営資源配分を検討するためのマトリックスで、縦軸に市場成長率、横軸に相対的マーケットシェアを取った4象限マトリックスで表されます。

 PPMは経験曲線効果とPLC(プロダクト・ライフサイクル)の考え方を前提としています。経験曲線効果(=累積生産量が増加するにしたがって、単位当たり生産コストが低減するという経験則)とPLC(導入期、成長期、成熟期、衰退期期)を組み合わせたマトリックスとなっています。

 キャッシュフローがマイナスの導入期→売上が増大する成長期→キャッシュフローが最大化する成熟期→キャッシュフローが減少する衰退期を、それぞれ「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」の4象限で表現します。

PPMの3つの仮定

  1. 相対的マーケットシェア(横軸)が高いほど、経験曲線効果により生み出されるキャッシュの量は大きいとします。
  2. 売上を増やすにはキャッシュが必要です。相対的マーケットシェア(横軸)を左(高)に異動する事業ほどキャッシュが必要となります。また市場成長率(縦軸)の上に位置する事業ほど、多くのキャッシュが必要となります。
  3. 市場成長率(縦軸)は、時間の経過とともに自然に低下していくとしています。これはPLCの考えを適用しています。

各象限について

 下図はPPMにおける象限間の「お金の配分」と「事業の方向性」を示した図です。

問題児

 PLCの導入期、若しくは成長初期に当たります。相対的マーケットシェアが低いため資金の流入は少なくなります。一方市場成長率は高く、設備投資や販売促進費用に多くのキャッシュが必要となるため、資金の流出は大きくなります。したがってキャッシュフローはゼロ、あるいはマイナスとなります。

 問題児は今後大きく発展する可能性(花形)も衰退する可能性(負け犬)になる可能性も秘めた事業です。いわゆる「健全な赤字部門」です。市場成長率が高いうちに、相対的マーケットシェアを高めていくことが必要となります。市場成長率を超える速さで自社事業が成長すれば、将来「花形」となり事業の柱となり得ますが、相対的マーケットシェアを獲得する前に市場成長率が鈍化すれば「負け犬」事業となってしまいます。

花形

 PLCの成長期に相当する事業が該当します。市場成長率が高く、相対的マーケットシェアも高い時期にあり、売上が急拡大するため資金流入は大きくなりますが、競合も多数参入してくるため、増産、広告宣伝、営業強化などの資金流出も大きく、キャッシュフローはあまり大きく生じません。

 花形事業は、やがて市場が成熟期に入った時に「金のなる木」にシフトできるよう、相対的マーケットシェアを高い状態で維持することが必要です。

金のなる木

 PLCの成熟期に相当する事業が該当します。相対的マーケットシェアが高いため、資金流入は大きくなります。また市場成長率は落ち着くため成長期における熾烈な競争環境はひと段落しており、これまでの経験曲線効果からコストは低い状態であるため、資金流出は小さくなります。つまり金のなる木事業はキャッシュフローが大きくプラスになります。

 問題児→花形(導入期→成長期)を勝ち抜き高いマーケットシェアを獲得した企業は、それまでの投資を金のなる木(成熟期)の間に回収し、大きな利益を上げることとなります。

 この金のなる木で得たキャッシュを次代に向けた「問題児」「花形」へ投資することで、企業の永続的発展サイクルを構築していきます。

負け犬

 PLCの衰退期に該当します。市場成長率、相対的マーケットシェアともに低い事業であり資金流入は少なく資金流出も少ないため、キャッシュをあまり生み出せません。

 負け犬に該当する事業は撤退を検討すべき事業に位置付けられます。しかし製品のリポジショニングにより再度成長期を迎える製品もあります。例えばハイチオールCは当初、30代男性向けの二日酔い改善薬でしたが競合商品が乱立したため、「女性向けのシミ・ソバカス改善薬」としてリポジショニングしました。これにより新たな市場を作り出し、再び製品が成長期を迎えることとなりました。

PPMの問題点

 PPMは、経営資源をキャッシュのみで捉えており、ヒトを育成する観点からの戦略とはなっていません。負け犬に位置付けられた社員のモラール低下は勿論のこと、金のなる木事業が稼いだキャッシュは問題児や花形に投資することから、金のなる木事業のモラールにも影響を与えます。

 また事業間の相乗効果や、企業がもつコア・コンピタンス(中核的能力)が無視されているという問題点があります。

※参考記事:ビジネス・スクリーン(9象限マトリックス)

PPMの活用

 PPMには上述の問題点はあるものの、事業の立ち位置を視覚的に捉え、中長期的な展望を検討する上では大変活用しやすい分析手法です。

 実際の活用では、例えば相対的マーケットシェアを「売上増加率」「販売額」に置き換えてみたり、「競合他社の数×自社販売額」など様々な切り口でマトリクスを構成すると、今まで見えていなかったことに気が付くこともありますので、ぜひお試しください。

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