1. HOME
  2. ブログ
  3. ブログ
  4. 賃金(給与・賞与)への不満が解消しない理由

BLOG

ブログ

ブログ

賃金(給与・賞与)への不満が解消しない理由

賃金(給与・賞与)に対する経営者の見方

「社員が活躍しないので賞与規定を変えてやる気を引き上げたい」
人事制度導入の相談を受けると、90%の確率でこのような発言をされる経営者がおります。社員のやる気や能力は賃金によって左右される、という考え方は非常に根強いものがあります。その背景には、経営者自身がこれまでに社内から

・給料が安くてやる気にならない
・給料を上げてくれればもっと頑張れるのに

といった声をたくさん聞いてきたこともあるでしょう。
また、多くの経営者に共通するのが「出来るだけ社員の処遇を良くしてあげたい」という気持ちを強く持っていることです。そんな気持ちも相俟って、賃金こそが人を動かすツールと考えがちです。

賃金(給与・賞与)への不満が高まるのは、賃金で不満を解消しようとするから

賃金への不満は、賃金で解消することはできません。賃金には次の2つの性質があります。

・一度得られれば既得権益になる
・成果に対する対価である

多くの経営者は、賃金を上げればやる気が出て仕事に邁進するだろうと考えています。しかし組織を強くしていくためにはこの考えを改める必要があります。
まず賃金というものは「どれだけ沢山あっても困らないもの」です。あればあるだけいいものですので際限がありません。そのため一度希望の金額をもらった社員にとって、それは既得権益になります。昇給したり沢山ボーナスを貰えたその瞬間はモチベーションがあがるでしょう。しかしそのモチベーションは永く続きません。経営者が想像する以上の速さで収縮していきます。なぜなら社員本人の中で、賃金水準が既得権益化していくからです。

既得権益化すると、昇給した給与をもらっているにも拘らずそれ以前と変わらぬ態度で仕事に望みます。しかし経営者としては昇給させたことで活躍への期待値が上がっているため、その態度や活躍に以前よりも強い不満を感じるようにます。そしてその不満をぶつけるように叱責します。すると社員はすでに昇給したことなど忘れていて「給料が仕事の割に合っていない」と不満をこぼすのです。

ここでまた賃金というツールを使ってやる気を出させようとすると、更なる負のスパイラルに入ります。賃金という人参をぶら下げらなければ動かない組織になります。そしてこんな会話が社内で頻発するようになります。

・給料を上げてくれたら頑張ります
・(依頼された仕事に対して)それをやったらいくら頂けるんですか?

これは組織の状態として非常に危険な状態です。「報酬は成果に対する対価である」という仕事の基本原則に異を唱えるという、異常事態です。そもそも賃金の原資は会社の利益です。利益の折半が賃金であるはずなのに、もはや会社の利益に対する貢献は二の次で、自分の利益を優先する組織になってしまっているのです。

経営者が賃金に対する不満を賃金で解消しようとすると、このような組織を自らの手で作り出してしまうのです。社員のやる気やレベルアップを賃金で解決しようとすればするほど、ますます賃金に対する不満が高まり、組織を壊してしまうのです。

賃金制度に手を付ける前に、評価と職場環境の不満を解消する

先ほどお伝えしたように、賃金というのは誰にとっても多ければ多いほどありがたいものですので、「不満のはけ口」として打ってつけです。そのため表面的な不満として賃金が大きく見えやすいのです。しかし不満の真因は別のところにあります。これまで私がやってきた従業員意識調査の結果を見ても、総合満足度に対する相関度で賃金が一番高かったという会社は1社もありません。賃金に対する不満は大きくても、それが総合満足度を左右する要因ではないということです。

賃金の不満が大きい、あるいは賃金規定を変えなければならないと感じている事情があるようでしたら、賃金制度の前に次の2つをチェックしてください。

・「褒める+指導する」仕組みがあるか
・職務分担、職務連携のルールはあるか

もしこれらに問題がないようでしたら、賃金制度そのものの問題を解消しても良いでしょう。しかし順番を誤ってはいけません。まずこれら2点の仕組みが整っていないうちに賃金制度を変えても、賃金への不満は解消されません。

「褒める+指導する」仕組み

賃金への不満は、経営者が抱く期待値と社員の実態とのズレに対して、賃金を用いて解消しようとするところから生じます。しかし本質的に重要なことは、経営者が抱く期待通りの成果を社員に出してもらうことです。成果を出してもらうためにすべきことは、成果を出せるよう能力面や行動面で成長してもらうことです。つまり出来ている部分は褒め、できていない部分を教育することです。

成長した部分を褒めるからやる気が出る→出来ていない部分を指導するから成長する→成果が出せるようになる→成果が会社の業績に反映される→その業績から賃金として分配される

このような好循環サイクルがビジネスの原理原則からみて健全なサイクルです。そのサイクルの始めに必要なのは昇給額や賞与額の話ではありません。褒める・指導する仕組みで成長を促進するところから始めることです。
褒める・指導する仕組みを作るためには次の3つに取り組むことが必要です。

何を評価するかを決める:評価すべき要素を洗い出し、文章にすることです。
褒めて指導する場を設ける:評価要素ごとに定量測定し、成長店を褒め、改善点を指導することです。
成長度合いをチェックする:成長度合いの定期チェックの仕組みです。未熟な社員ほどスパンを短く管理します。

職務分担・職務連携のルール

職務分担や職務間の連携に関するルールが決められているかどうかのチェックです。このルールがないと、業務のしわ寄せで多忙ン社員もいればその反面怠ける社員もおり、職場全体が非効率であったり、それに対応するための調整コストやコミュニケーションコストが多大にかかり、ミスも多発している可能性があります。この状態は職場が組織化されていないということであり、そもそも成果を出すということが不可能です。成長することもできないうえに関係性にまで悪影響を与えかねません。

このような職場の分業ルールを定めて浸透していくには次の3つに取り組むことが必要です。

業務マニュアルを文書化する:管理職が中心となって取り組むべきです。
業務マニュアルの意図と運用方針に納得してもらう場をつくる:マニュアルの量や難易度に応じて納得する伝え方をします。
運用状態をチェックする:運用度合いの定期チェックの仕組みです。運用初期ほどスパンを短く管理します。

まとめ

・賃金の不満を賃金で解消しようとするほど、賃金への不満は高まります。
・賃金制度整備の前に、「褒める+指導する仕組み」「職務分担・職務連携のルール」を整備しましょう。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事