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    設備投資の経営判断②設備投資におけるキャッシュフローの計算(前半)

    2020/8/7記事投稿

    2020/12/21加筆・修正

    設備投資の経営判断は“キャッシュフロー”で考える

     キャッシュフローとは一定期間における現金流入額と現金支出額の差額です。現金流入額をキャッシュ・イン・フローといい、現金流出額をキャッシュ・アウト・フローといいます。そしてその差額をキャッシュフローと呼びます。

     最終的な企業の業績の良し悪しは、このキャッシュフローに集約されると言っても過言ではありません。したがって設備投資の経営判断は「得られる利益」ではなく「得られるキャッシュフロー」で考えます。

     設備投資は、まず最初に高額なキャッシュ・アウトが発生します。そしてこの設備の生産能力を用いて毎年利益とキャッシュ・インを生み出し、やがて初期投資を回収することとなります。

     設備投資の判断は、一定期間後のキャッシュフローがプラスとなること」が絶対条件です。これを明らかにするために、投資額及び、一定期間のキャッシュフローの見積もりを行います。

    投資額の算定

     まず投資にかかる現金支出額を総洗いします。具体的には次のものです。

    【投資にかかる現金支出項目】 

    ・設備本体、付随費用⇒(投資額の増加)

    ・旧資産の売却による現金収入⇒(投資額の減少)

    ・旧資産の売却による税金の変動額⇒(ケースにより増減)

    設備本体・付随費用 

     設備本体や付随費用は設備購入時に額面がハッキリしているため、問題なく分かると思います。投資額算定における現金支出額として算入します。

    旧資産の売却による現金収入

     旧設備を売却した時に得られる現金収入額、いわゆる下取りのことです。車の買い替えにおける下取りと同じで、下取り額が多いほど新設備購入の現金支出を減らすことになります。この下取り額を算定し、現金流入額として算入します。

    旧資産の売却による税金の変動額

     「旧資産の売却による税金の変動額」とは、今回の新設備導入にあたり旧設備を売却した際の、売却額と簿価の差額によって変動する法人税額のことです。

     例えば簿価1,000万円の旧機械が1,200万円で売却できたとします。すると損益計算書には200万円の売却益が計上されます(簿価と現金収入の差額が計上される)。この場合会社は200万円の「追加利益」が発生したことになるので、200万円×法人税率分の法人税が課税されます。この法人税は今回の投資により発生する現金支出ですので、投資額の増加分(現金支出額)として算入します。

     反対に簿価1,000万円の旧機械を800万円で売却した場合損益計算書には200万円の売却損が計上されます。この場合会社は200万円の「損失」が発生したことになるので、税引前利益が200万円減少します。これにより、200万円×法人税率で計算される法人税額が「節税」されることになります。すなわち設備投資によって節税効果が働きますので、これを現金流入額として算入します。

    一定期間のキャッシュフローの測定

     投資以降にもたらされる毎年のキャッシュフローがいくらになるかを測定します。多額な初期投資額を複数年かけて回収していくことになりますので、毎年のキャッシュフローを計算し、一定期間分のキャッシュフローを合算して、「この投資案のリターンはいくらか?」を計算するのです。

    毎年のキャッシュフロー

    毎年の現金収入―毎年の現金支出=毎年のキャッシュフロー

    【一定期間のキャッシュフロー】

    1年目のキャッシュフロー+2年目のキャッシュフロー…+n年目のキャッシュフロー=一定期間のキャッシュフロー

    毎年のキャッシュフローの算出

     毎年のキャッシュフロー算出は、設備投資で得られる経常利益をベースに考えます。経常利益の求め方は、設備投資で予測される売上から売上原価と経費及び金利を差し引いたものと考えて差し支えありません。

     ただし、これだけではキャッシュフローは計算できません。キャッシュフローを計算するには、「減価償却費による節税効果」「運転資金増加」を加味する必要があります。 

    減価償却費による節税効果

     減価償却費は、現金の流出を伴わない費目です。

     設備投資を行うと、それ以降毎年一定年数、損益計算書に減価償却費が計上されます。この減価償却費は現金流出を伴わない「非現金支出費用」です。現金の流出はないものの、損益計算書上では費用計上されるため、その分利益の圧縮要因となります。そして利益が圧縮されるということは、その分節税効果が働くということになります。

     つまり、投資を行うことで投資を行わなかった場合に比べ、「投資にかかる減価償却費×税率」で計算される法人税分だけ現金流出が減る、という効果があるのです。これはキャッシュのプラス要因になります。

     例えば、現金収入から現金流出を伴う費用を引いた毎年の増分キャッシュフローが次のようだったとします。

    現金収入 5,000万円
    現金流出を伴う費用(追加人件費など) 3,000万円
    税引前収支 2,000万円
    法人税(法人税率40%) 800万円
    キャッシュフロー 1,200万円

     現金収入から現金流出を伴う費用を引いた税前収支が2,000万円で、法人税を引いた税引後利益が1,200万円となっています。しかし損益計算書上では購入設備の減価償却費が計上され、利益が圧縮されることから、これによる節税効果が生まれます。

     仮に減価償却費が1,000万円であった場合、減価償却費により利益が圧縮されているため、減価償却費×法人税率分=400万円の節税効果が働きます。したがって下表に示す通り、本来のキャッシュフローは1,600万円ということになります。

    現金収入 5,000万円
    現金流出を伴う費用(追加人件費など) 3,000万円
    税引前収支 2,000万円
    法人税(法人税率40%) 800万円
    税引後利益① 1,200万円
    減価償却費② 1,000万円
    減価償却費による節税額(②×法人税率40%)③ 400万円
    キャッシュフロー(①+③) 1,600万円

    必要運転資金

     通常、設備投資を行って生産能力が増強されると運転資金が増加します。生産量増加に伴って売掛金や受取手形などの流動資産が増加し、これらは決済されるまで現金化しないため、その間の必要運転資金額が増加します。必要運転資金が増えるということは、手元に入っていない現金の増加、すなわちキャッシュアウトが増えていることを意味します。

     計算方法は、まず支払いサイト差を計算します。支払いサイト差とは支払と回収期間の差を表します。支払いから回収までの期間が長いほど必要運転資金が増加し、資金繰りが厳しくなります。

     そして支払いサイト差に、設備投資で予測される売上増加額を掛け算した数字が、追加で必要な運転資金額になります。

    ●支払いサイト差=売掛債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間

    ・売掛債権回転期間=売掛金・受取手形÷月商

    ・棚卸資産回転期間=棚卸資産÷月商

    ・仕入債務回転期間=買掛金・支払手形÷月商

    ●必要運転資金=支払いサイト差×月商増加額

     設備投資による生産能力増強が行われると、売上は伸びるが資金繰りが厳しくなることがあります。設備投資を検討する際は、これにより運転資金がどれくらい増加するかを予め見積もっておくことが非常に大切です。この見積もりを省略したり計算を間違えると、投資後の資金繰り悪化の可能性が高まります。

    まとめ

    1. 設備投資の判断は「キャッシュフロー」で考えること
    2. 投資額を抜け漏れなく見積もること
    3. 年々のキャッシュフローを見積もること
    4. 年々のキャッシュフローの見積もりでは、減価償却による節税効果と、運転資金増加額を見積もること

    参考記事:設備投資の経営判断③貨幣の時間価値 

    参考記事:設備投資の経営判断④回収期間・収益性の算定方法

     


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