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社員からの少額投資判断を求められる提案に対する対応方法②

※前半記事はこちらをご参照ください。

 社員からの少額投資判断を求められる提案に対する対応方法について、前半記事にて自分たちのビジネスにおいて日常的に意識できる数字」で効果を測定することが、良質な意思決定の判断材料になるとお伝えしました。

 当記事では、小額投資判断を求められる提案をしてきた社員に対し、社長はどのような問いを投げ掛け、意思決定に必要な情報を引き出せばよいかを解説します。なお、例題は前半記事でも用いた以下の例題を使用します。

【少額投資判断を求められる提案(社員から社長への提案)】

・売り上げ目標を達成するために、新たにコンテンツを中心としたWebサイトを運用したいので、追加で100万円予算を付けて欲しい

【提案の趣旨の要約】

・競合他社もコンテンツ発信を強化しており、成功事例が出ている

・顧客はコンテンツに接する時間が増え、コンテンツによりブランド選好・購買意思決定を行う傾向が強まっている。自社の顧客アンケート結果からもコンテンツが購買意思決定に影響を与えている調査結果がある

・当社にはコンテンツを作成できる○○・△△という経営資源がある

・ゆえに、コンテンツサイトを創設することで年間売上高○○円を達成できる見込みである

部下に確認すべきこと

①本当に費用はこれで全てか?

 まず、稟議にかかれている費用が本当に抜け漏れなく全ての費用が合算されているかを確認します。このケースでは100万円となっていますが、外注制作費だけでなく、SEO対策費やコンテンツ作成にかかるコスト、機材、保守費用、それから追加的に人件費の増加が起こる可能性がないか、なども合わせて付随する費用が全て盛り込まれているかを確認します。

②1年間で投資額に見合う必要改善額はいくらか?

 提案の採択可否を判断するために絶対にクリアするべき論点は何でしょうか。

 それは1年間で、投資額以上の利益を確保できること」です。

 今回の事例では、投資という費用に対して最低限増加させなければならない売上高はいくらか?を明らかにします。最低限増加させるべき売上高とは、すなわち投資施策における費用と売上がトントンになり利益が±ゼロになる売上です。

 「投資額と売上がトントンにになり利益が±ゼロになる売上は、投資額と同額なのではないのか?」と考えられる方もいらっしゃいますが、これは同額ではありません。なぜなら売上が増加すれば、仕入額や荷造運賃などの変動費が追加的に発生するからです。したがってこれらを考慮した上での損益分岐点売上高を求める必要があります。

 ※損益分岐点売上高についてはこちらの記事に詳しく解説しておりますのでご参照ください。

 また、今回の事例のような比較的少額投資に関するものについては、その回収期間は長くても1年と設定するのが望ましいです。少額投資に関しては貸借対照表ではなく損益計算書の販管費に計上されるものが多いため(HP制作・SEO対策・広告宣伝・修繕・地代家賃・一部クラウドサービス等)、その場合期中に見合っただけの売り上げを立てられないと利益に影響するからです。

 今回の事例では、仮に施策を実行するのに必要な費用が初年度100万円だと仮定し、会社の限界利益率(粗利益率)は35%と仮定します。すると、この投資による収支トントンになる損益分岐点売上高は、

100万(費用)÷35%(粗利率)=285万円(必要増加売上高)

となります。少なくとも追加的に285万円の売上高増加を見込めなければ、Go出来ないという計算になります。

③その投資により、改善が見込める要素は何か?

 今回の例題の趣旨は一言で言うと「年間売上高○○円を達成するためにコンテンツサイト創設・運用が有効である。それにかかる費用100万円を使わせて頂きたい」という内容です。

 しかし、売上は様々な要素により成り立っています。最も分かりやすい分解式が、「売上高=数量×単価」。更に分解すれば「売上高=来客数×購買単価×リピート回数」のように、業種業態に応じて様々な要素に分けられます。売上分解式の詳細は売上分解式の作り方と活かし方の記事でご紹介しておりますので、ご参照ください。

 例題のような提案があった場合は、これを実行することにより売り上げ構成要素のどの要素に最も効いてくるのか?を確認しましょう。今回はコンテンツサイトを作ることで「客数」が増えると仮定します。

 なお、これはコスト削減効果を狙う設備投資やソフトウェア導入等の提案においても同様で、コストを要素分解した上で提案施策が効いてくるのは「変動費」なのか「固定費」なのか?また費目のどの部分に削減効果が効いてくるのか?など、コストを細分化して確認をします。

④今回の投資施策により、「要素」は「日常的な数字で」、どの程度改善するか?

 前半記事でもご紹介したように、具体的に改善する数値は自分たちのビジネスにおいて日常的に意識できる数字」で測定することで意思決定しやすくなります。今回の例題は毎日販売が行われるビジネスを想定しておりますので、「1日あたりの客数」を日常的に意識できる数字とします。

 つまり今回の例題では次のようになります。

「今回の投資施策により、1日当たりの客数は何人増加するか?」

 これに提案者が論理的に応えることで、かなり具体的かつ感覚的にも分かりやすい意思決定材料が揃います。

 まず、②で計算した必要増加売上高に必要な客数が何人かを計算します。計算方法は次の通りです。顧客1人当たりの平均単価が4,000円と仮定します。

●285万円(必要増加売上高)÷4,000円(平均単価)=713人(必要増加客数)

 年間で713人の来店数増加が必要になることが分かりました。さらに、自社の日常的な数字である「1日あたりの客数」を算出するため、必要増加客数を年間営業日数(300日とする)で割ると1日当たり増加必要客数が算出できます。

●713人÷300日=2.4人(1日あたり必要増加客数)

 つまり、今回のコンテンツサイト創設・運用にかける100万円に見合ったリターンは、1日あたり2.4人以上の追加集客が出来れば採用できるということになります。これなら経営者としてもかなり具体的でイメージしやすくなるのではないでしょうか。

 この「客数2.4人増加」が最低限死守すべき費用対効果であり、これを出発点として更に1日当たりの客数がどれくらいまで増やせそうか?を検討していくと、非常に意思決定がしやすくなります。

まとめ

 社員からの少額投資判断を求められる提案に対する対応が難しい理由は、費用対効果が年間売上高などの大きな単位となっていることが多い、あるいは非常に漠然としていることが多いからです。

 このような提案に対して有効な意思決定を行うためには、自分たちのビジネスにおいて日常的に意識できる数字で費用対効果を表現するよう、社員に依頼することです。

 手順は以下の方法です。

  1. 本当に費用はこれで全てかを確認
  2. 1年間で投資額に見合う必要改善額(必要売上高など)は、いくらなのかを確認
  3. その投資施策により、改善が見込める要素(客数・客単価など)は何かを確認
  4. 今回の投資施策により、「要素(客数・客単価など)」は「日常的な数字(1日当たり客数など)」でいくら改善するかを確認

 以上の手順で必要情報を揃えることで、より確実性の高い採択可否を行うことができます。

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