費用を変動費と固定費に分けるメリット
サマリー
- 変動費とは、売上の変化と連動して変化する費用のことです。
- 固定費とは、売上の変化に関係なく固定的に発生する費用のことです。
- 費用を固定費と変動費に分けるには、エクセルの関数「CORREL」や、決定係数(R-2乗)を使うと、費用がどちらに該当するかを数値上で確認できます。
- 変動費と固定費に分解すると、損益分岐点売上高の算出や収益構造分析が可能となり、経営上の意思決定に財務情報を活かせる度合いが飛躍的に上がります。
変動費
変動費とは、売上の変化と連動して変化する費用のことです。勘定科目として代表的なものは、次のようなものが挙げられます。
- 製造業:原材料費、消耗品費、外注加工費、荷造運賃、燃料費
- 小売卸売業:商品仕入高、包装資材費、運搬費
これらのものは、製品を1つ作ったり売ったりするときに、その販売量に応じて増減するものです。
例えば、売価100円、仕入れ価格60円、1個当たり運賃5円の品物を10個販売すると、変動費は650円になります(売価は1,000円)。
もしこの商品を1個も販売しないとなれば、仕入れ価格も運賃も0円になりますので、変動費は0円です。
固定費
固定費とは、売上の変化に関係なく固定的に発生する費用のことです。代表的な勘定科目は次のようなものです。
・人件費、減価償却費、リース費、地代家賃
費用が変動費か固定費かを調べる方法
費用を変動費と固定費に分けることを固変分解と言います。固変分解の方法は沢山のやり方があると思いますが、私も実践している方法を3つご紹介します。
エクセルで「CORREL」関数を用いる
CORREL関数とは相関係数を求める関数です。CORREL関数を用い、売上高と固変分解した費用の相関係数を求めることで、その費用が固変どちらに該当しているかが視覚的に分かります。
相関係数は-1~1の間で示され、相関係数が1に近づくほど、売上と費用は相関関係にある、ということになります。実務上ではビジネスモデルや会社の状況にもよりますが、相関係数が0.7以上であれば、その勘定科目は変動費的性格を示している、と判断することが多いです。
このケースでは外注費と荷造運賃が変動費、地代家賃は固定費、と出ました。
エクセルで「決定係数」を用いる
決定係数とは、近似曲線がどれくらい当てはまっているのかの目安を表し、2つのデータの相関関係の強さが表されます。近似曲線とは、年度ごとに横軸に売上、縦軸に費用をプロットした散布図の最適直線です。
R-2乗値が0.9266で1に近い数値となっており、この企業様の原材料費は殆ど売上に連動している変動費と言えます。
ビジネスモデルや実際の業務の内容から判断する
上記のように計算を用いて固変分解することは非常に説得力があります。しかし、やはり財務分析で最も重要なのは、なぜその結果に至ったのか?という原因や背景を知るということにあります。数値面から固変分解した結果が問題ないかどうか、をビジネスモデルや実際の業務内容から検証することが大切です。
例えば販売促進費。広告や販促活動は売上向上のために行うものですので、掛けた費用が売り上げに反映される変動費になっていることが望ましい姿です。もし販売促進費が売上高に連動しておらず、固定費となっていた場合、販売促進の内容について掘り下げて分析する必要があります。
例えば広告宣伝費を広告媒体ごとの費用に分解し、それぞれの費用の売上高との連動具合を分析します。すると、売上と連動している媒体もあればそうでない媒体も見つかります。こうすることで、売上に対して効果のある広告宣伝媒体や販売促進策などが浮き彫りになることがあります。
もちろん販売促進は様々な施策や要素が複合的に絡み合い、結果に繋がるものですので、一概にかけた費用と売上の連動だけ見て判断するわけにはいきません。しかし、費用と売上高にどのような関係があるのかを分析することで、様々な気付きを得たり、改善に向けた仮説を立てることが出来ます。
固変分解すると、収益構造の分析が可能となり、財務情報を意思決定に活かせる
さらに、費用を固変分解することで、損益分岐点売上高を算出することが出来るようになります。損益分岐点売上高が算出されると、その構成要素である売上高、限界利益(率)、変動費(率)、固定費による収益構造が明らかとなり、時系列でどのように遷移してきたのかが分析できます。
収益性を改善するには、売上高を上げる、限界利益率を高める(=変動費率を下げる)、固定費を下げる、の3つの方法しかありません。固変分解をすることで収益構造を詳細に分析できます。そして未来に向けた有効な意思決定に財務情報を活かせる度合いが飛躍的に上がります。
このように、費用を固変分解することは効果的な財務分析の基礎となっています。
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