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未来志向の財務分析に必要な視点

未来志向の財務分析に必要な視点

未来志向の財務分析に必要な視点

 分析、特に「財務分析」というと、結果の煮え繰り返しのようにも感じられ、それで未来に向けたイノベーションや経営発展が望めるのか、というご意見も頂くことがあります。たしかにただ単に財務諸表の数値を分析したものは「分析のための分析」であり、企業様に良い影響を与えるものにはなり得ません。ここでは、財務分析を将来の企業発展のために活かすための「分析視点」について考えたいと思います。

サマリー

1.財務分析は過去の一定期間の財務結果を整理したものです。従って、将来に向けた改善や経営の発展に活かす分析を行うには、財務結果に至った原因である「事業活動」と「組織の状態」を同時に分析することが不可欠です。

2.財務分析の重点は利用者や目的により違います。経営者様にとっては現在の収益性・生産性とともに、将来の収益性・成長性の把握が目的であり、現在の数値分析と中期経営計画がその中核となります。

未来志向の分析に必要な3つの視点

財務活動は「結果」、ドライバーは「事業活動」と「組織活動」

 過去の一定期間の経営成績を表したものが損益計算書であり、過去の一時点の経営状態を表したものが貸借対照表です。いずれも過去の状態を数字で表現したもので、これらの数字は経営の「結果」ということになります。

 結果に至るにはその背景に必ず原因があります。その原因は何かというと「事業活動」「組織活動」です。

 このことから財務結果の分析を行う場合、必ず事業活動と組織活動の分析がセットになっている必要があります。

 事業活動とは企業様の本業の活動そのものを指し、企業理念、経営戦略、マーケティング、生産計画や営業方針、さらに外部環境の影響など、あらゆる事業活動が含まれます。

 組織活動とは組織構造、責任権限、コミュニケーション経路、モチベーション、人事制度など、「組織構造と人材」に関するすべてが含まれます。

 これは財務諸表という制度会計上の数字の分析に限らず、例えば部門別損益計算書や、ある営業1課社員の売上や行動数値といったミニマムな単位の数値分析でも同様です。例えばある営業1課社員の売上・行動数値に問題が発生した場合、当人の行動(事業活動に該当)と課の上長とのコミュニケーションや支援状態(組織活動に該当)について同時に分析することが大切です。

財務分析、事業分析、組織分析は、同じ企業活動を違う切り口から捉えたもの

 さらに、これら3つの視点は、同じ企業活動を違う角度から捉えたものと言えます。3つの視点は全て関連しており、例えば財務結果で在庫過多が問題となっていた場合、必ず事業活動と組織活動にも問題が出ています。

 一例をご紹介すると、ご支援させて頂いた企業様は品揃えの幅に大きな強みがあり、それが収益性を押し上げていましたが反面、棚卸資産が増加傾向となっておりました。これは収益性と安全性にトレードオフの関係ができている例で、もし安全性を重視して単純に棚卸資産を削減すれば、事業活動面の強みである品ぞろえの幅を失うことになります。この企業様のケースでは、事業活動面の課題としてはマーケティングや営業機能強化による顧客ニーズの吸い上げが挙げられました。また組織面としては在庫のリアルタイム把握と適正化のためのシステム活用によるコミュニケーションルールの見直しや、開発部の責任権限体制の見直しが課題として挙げられました。

利用者による財務分析の重点の違い

 財務分析はその分析結果の利用者によって分析ポイントが違います。まずそもそも財務諸表が誰のために作られているものか、について考えたいと思います。

1.財務諸表は「投資家」「国」のためのもの、という側面が強い

 財務諸表が制度により作成の仕方が決められているのには理由があります。簡単に申し上げると、財務諸表は「投資家」と「国」のためにあるという側面が強いのです。帳簿記帳のルールや会計制度が定められているのは、統一されたルールに基づいた帳票でないと、投資家が企業同士を比較できなくなるからです。また、国にとっても同様、税金を徴収するにあたって同一の会計ルールに乗っ取った税務計算がなされないと、企業から構成に税金を徴収できないからです。

2.金融機関にとっての財務分析の重点ポイント

 投資家、国と同様、財務諸表を重視する立場として金融機関があります。金融機関としてはやはり貸付金の返済可能性を重視しますので、特に内部留保の厚さや運転資金などの安全性、またキャッシュフロー計算書による債務返済能力に重きを置いています。どちらかと言えば、確定した結果数値としての過去分析がポイントとなります。

3.経営者にとっての財務分析の重点ポイント

 そして経営者にとっての財務分析とは、ここまで述べてきましたように「将来志向」であり、事業分析と組織分析とあわせて未来の経営改善や経営発展に繋がるものであることが必須です。つまり「現在の数値の分析」「近未来数値である中期経営計画」が重要ポイントとなります。

 分析で特に重要視されるのはキャッシュフロー(キャッシュの増減)、収益性(投下資本に対する利益獲得能力)、生産性(経営資源、特にヒトに対する付加価値算出額の高さ)、損益分岐点となります。損益分岐点分析は通常の財務諸表で行われる費用の分け方(売上原価、販管費など)ではなく、費用を売上高との関係で捉え、売上高に連動して発生する「変動費」と売上高に関係なく発生する「固定費」に分解して考えます。

 これらの分析を通じ、さらに事業分析・組織分析と合わせて、将来どのようにどれくらいの収益・利益を上げるか、を算出した中期経営計画に落とし込みます。

財務分析の視点

まとめ

 ここまで未来志向の財務分析の視点について考えて参りました。

 財務分析は過去の一定期間の財務結果を整理したものです。従って、将来に向けた改善や経営の発展に活かす分析を行うには、財務結果に至った原因である「事業活動」と「組織の状態」を同時に分析することが不可欠です。

 また財務分析の重点は利用者や目的により違います。経営者様にとっては現在の収益性・生産性とともに、将来の収益性・成長性の把握が目的であり、現在の数値分析と中期経営計画がその中核となります。

 以上の視点を持ったうえで財務分析に入ることで、財務分析は大変有意義なものとなります。具体的な分析手法は随時お知らせして参りますので、ご参考になさって頂ければと思います。

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