事業計画―戦略連関図表
ビジョンと目標を達成するためには、事業戦略と組織戦略が財務結果に強く結びついていることが必要です。外部環境の大まかな流れの方向性を捉えたうえで、自社のリソースを活かした戦略があれば、事業の成功確率は上がるでしょう。
また戦略はあくまで活動の方向性ですので、そのままでは具体的に何に取り組めば良いのかが分かりません。戦略に身体性を与え、目に見える活動となる具体的施策を多く出すことが、戦略を有効なものとして機能させます。
これらの要素―目標、戦略、具体的施策-がどのように繋がっており影響を与えているかをまとめる有名なツールがBSCでしょう。
「組織・学習の視点」「業務プロセスの視点」「顧客の視点」「財務の視点」が、どのように繋がりを持っているかを示しています。
事業計画―戦略連関図表
戦略を立案する際にその戦略の有効性、つまり財務結果やビジョンとの繋がりがどのようになっているのかを分かりやすく示したものが戦略連関図表です。経営目標―事業戦略―組織戦略―具体的施策が、どのように繋がっているのかを1枚のシートでまとめるツールです。
事業計画―戦略連関図表の目的
この戦略連関図表の目的は、事業計画を1枚のシートで見える化して「面」で捉えることで、経営目標と戦略の因果関係を分かりやすく表現するためです。
まず上段には経営理念とビジョンが表現されます。そして中段以降は大きく「事業戦略」「経営目標」「組織戦略」の3つで構成されます。
事業戦略欄
事業戦略欄は主に「ドメイン(誰に、何を、どのように提供)」「競争戦略」「マーケティング戦略」などが中心となります。マーケティングは4P、4C、7Pなどの要素ごとに戦略と具体的施策を記述します。
例えばある洋品店の戦略連関図表の例を次に紹介します。
ドメイン:
「30~40代でプライベートよりも仕事に邁進する営業マン向けに、オーダースーツを提供する」
競争戦略:
「営業マンのニーズを捉えた提案力と技術力をいかした密着軸をとり、ターゲットに集中する差別化集中戦略」
マーケティング戦略↓
商品価格:
営業マン向けの中高価格オーダーメイドスーツに特化。中価格帯には汎用性あるオーダースーツを開発し、制作リードタイムの短縮を図る。メンテナンスメニューを開発してリピート化。
プロモーション:首都圏を中心に活動する営業マン向けの情報サイトや雑誌で、デキる営業マンに訴求する広告出稿。オーダースーツの拘りを伝えるイベントのオンライン配信、メンテナンスメニューのSNSを使った個別案内の強化。
組織戦略欄
組織戦略欄は主に「人材育成」「組織管理」「評価」などの視点から、その方針と具体的記述を記述します。
人材育成:
マニュアル整備、スキル評価基準の導入、業務標準書の作成。
組織管理:
PDCAサイクルの構築、会議設計、行動計画進捗管理、縦横コミュニケーションの仕組み
評価:
等級・評価・賃金制度の整備、目標管理制度の導入
経営目標欄
経営目標には、目標とする利益額から逆算した固定費、変動費(率)、限界利益(率)、売上高(数量、単価)などを記述します。
事業戦略と組織戦略を、経営目標とつなぐ
経営目標、つまり財務結果は事業活動と組織活動の結果です。そのため事業戦略と組織戦略やその具体的施策が、財務結果のどの部分に影響を与えるのかを、線で結んで整理します。
これを行うことで、会社の中に「点」で存在する取り組みが財務結果という1つの柱と有機的に結合しており、取り組みが全体の成果に対してどんな役割と影響を持っているかが分かるようになります。これが、事業計画を「面」で捉えるということです。
事業計画書は冊子として残るものですが、冊子だけでなくこのような全体を俯瞰できるマップのようなものがあると、戦略を実行する社員にとっても自分たちの仕事の位置づけや役割をより明確に認識することができます。また、戦略や具体的施策が目標数値に対して本当に抜け漏れなく、十分であるかも検討出来ます。
事業計画策定の際は、ぜひ試して頂ければと思います。
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