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設備投資の経営判断②貨幣の時間価値

設備投資の経営判断②設備投資におけるキャッシュフローの計算(後半)

設備投資の経営判断②設備投資におけるキャッシュフローの計算(後半)

2020/8/11記事投稿

2020/12/22加筆・修正

貨幣の時間価値

 設備投資のような長期にわたって投資資金を回収する計画で用いられる概念の1つに、貨幣の時間価値があります。

 例えば、100万円を今受け取る権利と5年後に受け取る権利がある場合、おそらく誰もが今100万円を受け取る権利を行使し、お金を手にするのではないでしょうか。今100万円をもらって資産運用すれば、5年後には100万円プラスαの配当や利息が得られます。

 つまりこれは、貨幣の価値は時間経過により変化する、ということを表しています。現在の100万円と5年後の100万円は違う価値を持つということです。

 例えば年利5%とした場合、現在の100万円の1年後の価値は次のようになります。

100万円×(1+5%)=105万円

 さらに5年後の価値は次のようになります。

 この計算から言えることは、現在の100万円は5年後の128万円と同等の価値があるということです。反対の言い方をすれば、5年後に128万円を得るためには、現在の投資額が100万円以下でなければ、実質経済的効果を得られない、ということになります。長期間に亘って企業活動に影響を与える多額の投資判断を行うには、貨幣の時間価値をキャッシュフローに見積もることが必要です。

 現在の貨幣価値から将来の貨幣価値を求める係数を期待収益率といい、期待される利回りを表します。

 反対に、将来の貨幣価値から現在の貨幣価値を求める係数を割引率(資本コスト)といいます。期待収益率と割引率は表裏一体の関係となっています。

 投資から1年後に得られるキャッシュフローと5年後に得られるキャッシュフローは、投資時点における貨幣価値が異なります。投資効果を正しく判定するには、将来キャッシュフローの価値を投資時点の価値に置き換えることが必要となります。したがって設備投資の経営判断を行う際は割引率を用い、将来得られるキャッシュフローを現在価値に置き換えたうえで、投資額と比較を行います。

 割引率(資本コスト)の計算方法として代表的なものが加重平均資本コストWACCです。これは、

・債権者が会社に要求している収益率(≒貸出金利)

・株主が会社に要求している収益率(≒配当割合)

を加重平均して求めるもので、債権者と株主を共に満足させる割引率であり、企業は大型投資を行う際に、最低限この割引率をクリアする必要があります。なぜなら、設備投資の資金調達先が求める金利や配当以上のリターンを得られなない投資計画ならば、設備投資の経済効果はマイナスということになるからです。

 計算方法はグロービス経営大学院HPに詳細が記載されているのでご参照ください。https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-12525.html

毎年のキャッシュフローを現在価値に置き換える

 では例を見てみましょう。次のような設備投資案があるとします。投資額は8,000万円、投資計画期間は4年で、毎年のキャッシュフローは1年後に1,600万円、2年後に2,000万円、3年後に2,600万円、4年後に3,200万円を見込んでいます。

 では、毎年のキャッシュフローを投資時点の貨幣価値に置き換えると、それぞれの現在価値はいくらになるでしょうか。割引率(資本コスト)は5%と仮定し、1年後~4年後のキャッシュフローに資本コストを掛け併せて計算をすると下表のようになります。

 

 そして将来の毎年のキャッシュフローの現在価値を合算すると、この投資によって得られるキャッシュフローの現在価値は8,216.3万円となることが分かりました。この貨幣価値を考慮した設備投資案は下表のようになります。

 キャッシュフローの現在価値合計と投資額を比較すると、現在価値の合計が216.3万円上回っていることとなり、この設備投資案は採用に値する投資案(実際に採用するかどうかは別として)である、ということができます。

まとめ

 将来得られる毎年のキャッシュフローを現在価値に置き換え、これを投資額と比較をすることで正しい経営判断を導くことが可能となります。大型投資を行う場合は、投資額の抜け漏れのない算出、年々のキャッシュフローの慎重な見積もり、そして年々のキャッシュフローの現在価値の判定が重要要素となります。

※関連記事:設備投資の経営判断①キャッシュフローと投資額の計算方法

※関連記事:設備投資の経営判断③回収期間・収益性の算定方法

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