損益計画の策定手順
損益計画とは
事業計画を策定する際には必須の損益計画ですが、損益計画とは会社の将来の経営収支を予測した「予測損益計算書」です。実現可能性のある損益計画を策定するには、事業戦略との整合性が取れている必要があります。ここでは、事業戦略との整合性を取りながら損益計画を策定する手順をご紹介します。
損益計画の策定手順
まずは目標経常利益額の設定から
損益計画で最終的に達成したい指標は経常利益です。経常利益は企業が通常の営業活動で経常的、反復的に生じる利益のことであり、本業の営業に加えて財務活動など企業全体の収益力を図る指標です。また、フリーキャッシュフローの計算根拠にもなり、企業価値の算定や債務償還年数の算定の基礎となる数値です。
したがって、損益計画の策定手順としては先に目標経常利益額を決め、売上や費用は目標経常利益額から逆算して算出するのが望ましい姿です。戦略やビジネスモデルに照らし合わせ、試行錯誤しながら損益計画と戦略の整合性をとり、実現可能な計画に落とし込んでいきます。
それでは、次の事例で具体的な損益計画立案手順を説明致します。当期は目標経常利益額として、前年比100百万円アップの350百万円を目標とした損益計画の策定手順です。
売上高の増加による経常利益達成を考える
目標経常利益額達成を、売上高の増加のみで考えたのが次の例です。経常利益を350百万円にアップさせるために必要な売上高は次のようになります。
売上高は2,000百万円→2,286百万円で、約前年比114%を目指す必要があります。計画立案ではこの妥当性について各部門の部門長と対話をし、調整しながら確定していくことが必要です。売上高で言えば主に営業部の部門長がその対象になります。
例えば対象市場が成熟しきっており、既存市場での市場成長性が見込めない場合、前年比114%は難しいかもしれません。新市場開拓戦略に乗り出す予定であれば、新市場の成長性と自社が当期獲得できるであろうボリュームを勘案したりして、頑張れば実現できる数値に着地させます。
限界利益率の増加による経常利益達成を考える
仮に既存市場が前年横ばいで、当期から取り組む新市場で多少の伸びは期待できるものの、前年比114%は難しく、前年比107%(2,140百万円)を目標に設定したとしましょう。その場合、売上高増加のみでは目標経常利益を達成できなくなりますので、次に限界利益率の増加、すなわち変動費率の引き下げを検討してみます。
限界利益率は35%→37.4%へ、2.4%向上させる必要があることが分かりました。
固定費削減による経常利益達成を考える
ここで工場長を呼び出して限界利益率を2.4%改善することが可能かどうか議論したところ、既存仕入先ではこれ以上の仕入れ価格低減は難しく、新たな仕入れ先を開拓することにより1.4%の改善の実現可能性はありそうだ、ということが分かりました。
限界利益率を1.4%改善して35%→36.4%に改善した場合、目標経常利益を達成するためには固定費を450百万円→429百万円へ21百万円削減する必要があることが分かりました。そして、これを達成するための具体策、例えば事務スタッフの多能工化や作業標準化による残業時間の削減、広告宣伝費の見直しなどを検討していきます。
まとめ
このように目標経常利益額から逆算して損益計画を作成することで、会社全体としての目標を見失わず、戦略との整合性を図りながら各部門が納得感の高い、実現可能性のある損益計画を作成することが出来ます。
実際の運用では部門間の利害関係の対立などでなかなか困難な作業ではありますが、この損益計画策定プロセスを通じて、他部門の取り組みや苦労なども部門間で共有することができ、セクショナリズムの打破にも繋がる可能性もあります。
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