職務特性モデル
サマリー
職務特性モデルとは、心理学者のハックマンと経営学者のオルダムにより提唱された、仕事と仕事に従事する人のモチベーション関係を表したモデルです。仕事を通じて満たされるべき人間的要素が整理されています。
職務特性モデルは職務の特性が内的モチベーションを高めるメカニズムを説明しており、職務診断調査(JDS)という測定手段により、実際に職務内に中核的職務特性を発現させる取り組みが企業でも行われています。
職務特性モデルは、職務の5つの「中核的職務特性」が、職務遂行者の体験を育てて「決定的心理状態」を形成し、その「成果」として遂行者の内的モチベーションや満足に影響を与えるとしています。
また、職務特性がどの程度労働体験を育て、どの程度モチベーションや満足度に影響を与えるかは「モデレイター」に左右されるとしています。
中核的職務特性
中核的職務特性とは次の5つです。
- 技能多様性:多数の異なる技能や才能の使用を含む多様な活動が職務に含まれる度合い
- タスク・アイデンティティ:仕事の全体やその一部であると確認しながら遂行することができる職務
- 有意義性:職務が組織内あるいは顧客、社会に影響を与える度合い
- 自律性:自らスケジューリングや、手順や方法を決める自由、独立性、最良の余地がある
- フィードバック:自分がどれだけ効果的に職務を遂行しているかを、職務を通じて得られる度合い
決定的心理状態
職務の中核的な特性にこれらの要素が見られると、次のような心理状態が発言します。
- 仕事の有意味体験:個人が仕事を全体に対して有意味で価値あるものとして体験(「技能多様性・タスクアイデンティティ・有意義性が影響を与える)
- 成果への責任の体験:遂行した仕事の結果に対して、個人的に責任を感じられる(自律性が影響を与える)
- 結果の認知:いかに自分が職務を効果的に遂行しているか、を認知できる(フィードバックが影響を与える)
成果
中核的職務特性の体験が決定的心理状態を作り、その成果として以下のような満足が職務遂行者に発現します。
- 高い内的ワークモチベーション
- 高い成長満足
- 高い総合的職務満足
- 高い仕事有効性
モデレイター
職務を遂行することで、内的モチベーション向上や成長満足、職務満足を感じ、質量ともに高いレベルの仕事につながります。
職務特性モデルは職務が内的モチベーションに与える影響のメカニズムを説明していますが、「中核的職務特性」→「決定的心理状態」→「成果」の関係は、個人差を反映した「モデレイター」により調整されます。モデレーターには次の3つがあり、これらの高低により成果は変わるとしています。
1.知識と技能
職務の魅力と、職務遂行者の知識や技能の高さの組み合わせにより、内的モチベーションや満足度は変わります。例えば与えられた職務に魅力があり、それをこなし得る知識と技能を持つ人であればモチベーションは大きく上がり、職務の魅力が高くとも人の知識や技能が不足していると不満足を覚えます。
2.成長欲求の強度
中核的職務特性の高い職務は、自己指揮、学習、個人的達成感の機会を与えます。成長欲求は現状を打破する達成感や学習を求める欲求であり、成長欲求が強い人が高い職務を遂行すると、大きな内的モチベーションが醸成されます。
3.コンテクストに対する満足感
コンテクストとは賃金や管理体制、同僚との人間関係などの職場環境を指します。これらに満足している人は、より積極的に中核的職務特性の高い職務に反応し、挑戦しようとします。コンテクストに不満がある人は、職務遂行エネルギーがコンテクスト対処に費やしてしまい、職務内容の充実が疎かになる傾向にあります。
次の図は、2.成長欲求の強度と3.コンテクストに対する満足度が、どのように職務へのモチベーションやパフォーマンスに影響を与えるかの組み合わせです。
まとめ
職務特性モデルでいう「中核的職務特性」→「決定的心理状態」→「成果」というフローを実現するために、マネジメント層は職務設計時に「中核的職務特性」を感じられる職務設計を行うことで、満足度やパフォーマンス向上を期待できます。
職務診断調査(JDS)では、次のようなモデルで中核的職務特性にリンクした実施原則を示しています。中核的職務特性を満たすために、家業の結合、自然な仕事単位の形成、顧客との関係、垂直的負荷、フィードバック経路の5つを意識した設計を行うとよいでしょう。
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