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売上・利益増加の仕組みをつくる

小売店の収益力向上戦略を成長戦略から考える

小売店の収益向上戦略を考える

小売店の収益向上戦略を考える

小売店における買い手と売り手の交渉力

 値引き抑制をすることで単価向上させ、利益を増加させることは、儲けを生み出す仕組みとして大変有効です。しかし同時に値引き抑制により数量が減少した場合の仕入れ価格について考える必要があります。

 小売業の場合、商品仕入価格はメーカーや卸業者との目標取引額(量)により変化します。したがって小売店側では値引き抑制により「数量減・利益増」が実現した場合、仕入れ先にとっては取引数量が減りその分利益を失うことになりかねないため、当然取引条件の見直しによる仕切価格の引き上げを要求します。特にその商品が小売店側にとって“なくてはならない重点商品”であった場合、なおさらその要求は強くなります。

 つまりマイケルポーターの5フォース理論における“売り手の交渉力”が高い場合、“買い手(顧客)”を説得して単価を稼ぐことができたとしても、その分仕入れ価格も上昇してしまうリスクにさらされています。またテクノロジーの進展によるメーカーのダイレクト販売が可能となったこともあり、買い手の交渉力は益々強さを増しています。

 さらに、一般的に小売業における買い手市場は人口減少により縮小傾向にあるため、買い手の交渉力は高まっています。

 売り手・買い手とも高い交渉力を持つと、その産業の収益力は低下します。簡単に言えば儲かりにくいビジネスモデルになるということです。

 このような背景を踏まえて中小小売業がどのようなビジネスモデルを構築すれば良いでしょうか。成長戦略のうち市場浸透、新商品開発、新市場開拓の点から考えてみます。

収益力アップを図る成長戦略

市場浸透戦略

 市場浸透戦略は、同一顧客層に同一商品を繰り返し販売し、顧客シェアを高めていく戦略です。ニッチ分野、特定地域で活躍する中小企業にとっては取りやすい戦略ですが、人口減少というマクロ動態が続くことで自然と販売量に限界が訪れます。

 市場浸透はクロスセルやアップセル、購買頻度を高める施策などが代表的なものです。

 販売数量が増加すれば売り手の交渉力は引き下げられるでしょう。しかし販売数量を増やすために販売価格を引き下げれば利幅は減少します。また、近くに大手競合がいた場合、その取扱商品が自社にしかない専門的なものでなければ価格で対抗するのは難しいでしょう。

 また専門商品を取扱っていたとしても、先述のとおり、売り手に高い交渉力を付与する高付加価値・希少商品であれば、メーカーがダイレクト販売するインセンティブが高まります。実際に、洋品や日用品でもD2Cと呼ばれるメーカーのダイレクト販売は加速しており、流通の中抜きは今後も続いていくものと思われます。

 以上から市場浸透は買い手・売り手の交渉力を引き下げ、収益性を高めるには今後厳しくなる戦略と考えられます。

新商品開発戦略

 小売業の本来の強みは、最終消費者のニーズを汲み上げる力に長けていることです。小売業者が自ら新製品開発を行うメリットは十分あります。大手チェーンストアが積極的にプライベートブランドを開発するのも、顧客ニーズという無形資産を活用し、売れる商品を企画する力を持っているからです。

 今後、小売業であっても新製品開発戦略は必須の力となるものと考えます。今まで商品開発をやったことがない小売店であっても、出来ることはあります。

 新商品開発をすると、基本的にその商品は自社のオリジナルブランドとなりますので、売り手の交渉力の影響が小さくなります。もちろん、実際の商品生産は外部委託することになりますので、定められた条件での仕入れとなります。しかしその商品企画に魅力があり販売増が見込まれる場合、生産業者に対する当社の交渉力は高まりますし、実際にその企画商品が沢山売れれば、更に有利な条件を引き出すことができます。

 新商品を開発する場合は2つのことを考えると有効です。1つは「新商品の企画」を顧客ニーズから考えること、もう1つは顧客が望んでいる利便性や便益から「自社独自のサービス」を開発することです。意外と見逃されがちで、しかも小売店の自助努力で開発できるのが「自社独自のサービス」です。例えばデリバリーやメンテナンスなどのサービスなどです。これらのサービスはビジュアル化して見えるようにすると「商品」となります。単なる付加サービスとしてオマケ程度に打ち出すのではなく、顧客のニーズや利便性に応える「目に見える商品」としてビジュアライズした冊子やパンフレット等を作成することで、サービスを商品化することができます。そしてこの商品は(単価は低くとも)高い粗利益率を実現できます。

新市場開拓戦略

 既存商品を新たな顧客層やエリアに販売していく戦略です。新市場とは大きく「新たな顧客層開拓」と「新たな販売エリア開拓」の2つに分けられます。

 小売業において「新たな販売エリア開拓」とは新規出店とEC販売の強化となります。どちらの方法をとっても、その意図するところは販売量の増加です。販売量が増えればメーカーとの交渉では有利になるでしょう。しかし同じものを他のエリアに販売するため、その商品によほどの希少性がなければ買い手に対する交渉力は高まりません。

 また「新たな顧客層開拓」は「今までの商品が全く違うニーズを持った顧客層に受け入れられる」ということです。

 例えば「刻み海苔」をつくるためのハサミがありました。1枚の海苔をこのハサミで切ると、簡単に刻み海苔が出来上がるというアイテムです。発売後は鳴かず飛ばずだったそうですが、あるときメインターゲットである主婦が、これを自宅に届く郵便物などのシュレッダーとして使っていることを知り、書類を裁断する簡易的なシュレッダーとして売り出したところ、大ヒット。折しも個人情報保護法が制定された時期ということもあり、法人にも沢山売れました。

 事実全く商品には手をつけず、やったことと言えばラベルを変えただけだそうです。ターゲットを設定し直したことで、思わぬニーズに応えることができた恒例です。

 小売店でも、取扱商品の思わぬ使い方があることをご存じの方は多いと思います。その道で長年ご商売をされた方には、メーカーでも知らない情報や独特の使い方を知っている方は多いように見受けられます。それらの情報を「新しい使い方の提案」として見える化し、ニーズがありそうな顧客層に向かって発信する、というのも立派な新市場開拓です。このような取り組みは、販売数量を稼げるため売り手への交渉力を高めますが、それ以上に買い手への交渉力が高まります。なぜなら、既存顧客にとっては既にありきたりな価値となっている商品も、新たな顧客層には新鮮で新しいものにうつるためです。同じモノでも、ニーズが違う人にとっては違う価値を持つということです。

まとめ

 売り手・買い手の交渉力がこれからも強まるなか、小売業としても積極的に新商品開発や新市場開拓戦略を打ち出すことで、収益力の高いビジネスモデルを創出することに繋がります。

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