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     さて、前回お送りしました「経営に直結する会計力とは(前編)」に引き続き、今回はその後編になります。前回は企業会計基準や決算書の本質的な意味合いについてお伝えしました。復習すると、次のようになります。

    1. 企業会計基準により作成される決算書は、国・株主・債権者への公正性を担保した報告書類であること
    2. 企業会計基準は、既に終了した過去の一定期間あるいは一時点での数字を扱っていること
    3. 企業会計基準は、外部報告のための書類作成ルールであり、必ずしも経営判断に役立つ情報を得られるとは限らない
    4. 企業会計基準は過去の数字のみを扱い、未来の数字は何ら示さない

     企業会計基準はこのように「外部関係者に過去の実績を報告する書類」という性格を持っています。そのため、未来に向けて業績を作る経営者が会計数字を活かすためには、視点を変えて決算書の数字を見ることが必要、ということをお伝えしました。

     それでは、真に経営に役立つ会計情報の活かし方とは何でしょうか・・・?それは『未来の目標数字を描く力』です。その理由とポイントをお話します。

    経営者という立場での会計情報の活かし方

    未来のあるべき経営数字を設計する

     決算書は税務申告や株価算定などの資料として作成されますので、会計基準に従って実績を正しく表示することが求められます。一方、経営者にとって本当に重要な数字とは何でしょうか?

     経営とは常に未来に向かって前向きに行うものです。「前向き」とは自らの意思と信念で狙いを定め行動する姿勢に他なりません。つまり、経営者にとって本当に必要な数字は「過去の数字」ではなく、これから先どんな数字を作っていくべきかという「未来の目標数字」なのです。目標数字があれば目指す地点が定量的に計測可能となり、現状との差異や実現に向けた方向性も検討することが可能となります。

     逆に目標数字がないということは、頂上の場所が分からないまま山を歩くのと同じ状態といえます。頂上が分からなければどのルートをどんな日程で進めばよいかも分かりません。一方、登頂すべき山頂が明確になっていれば、そこへ至るルートも装備も日程も計画することが可能となります。近所の丘をピクニックする程度であれば計画を立てる必要もありませんが、エベレストに上ろうと思えばやはり綿密な計画がなければ難しいでしょう。

     繰り返しますが、経営にとって本当に重要な数字は過去の実績数字ではありません。自社の理想的な財務状態を明らかにし、そこから導かれる「目標数字」こそ、会社の羅針盤となり、社員を動機づけ、確かな業績向上に繋がる1手を生み出す重要情報となるのです。

    どんな目標指標を設定するか

     これは業種特性やビジネスモデルによっても様々なので、一概に正解はありません。しかし、どんな業種においても最低限定めておくと良い指標はあります。それは「経常利益・総額人件費・粗利益・売上高」の4つです。

    経常利益

     経常利益とは1年間の営業活動を通じた会社の利益です。毎年の経常利益が積みあがることで内部留保が厚くなります。その結果会社の体力・信用力・資産価値が高まり、資金調達や資金繰りにおいても非常に有利になります。

     私はコンサルティングにおいて「お金に縛られない経営体制」を1つの支援目標としておりますが、その要は経常利益を生み出すことです。経常利益を積み上げることで資金に余力が生まれ、無借金経営を展開することも可能ですし、逆に信用を担保に資金調達を行い業務拡大することも可能となります。

    総額人件費

     会社にとっての利益は「経常利益」です。それでは会社の業務を支える従業員の利益は何でしょうか?経営者と同じく会社の利益でしょうか?もちろん、そうあることが望ましい姿であることは間違いありません。社員も一緒になって会社の価値創出に貢献している組織は素晴らしい組織です。しかし、たとえ会社の方針にコミットし業績に貢献してくれる社員だとしても、彼らの経済面における利益とはすなわち給与に他なりません。

     一方、彼ら社員にとっての給与=利益とは、企業会計の視点から見れば人件費という費用になります。しかし多くの社員にとって、貴社から頂く給与は生活給となっているはずです。生計を維持し暮らしを豊かにしていくための根本的原資になっているということです。したがって、彼らの給与総額である総額人件費水準を設計することは、社員の努力に報いる第一歩ではないか、と私は考えるのです。

     会社の利益である経常利益目標があり、これを達成した暁には、社員に対してこれだけの報酬を用意する、という宣言を具体的な数字で示せれば、社員も俄然やる気になるのではないでしょうか。また同時に、「自分たちの収入は会社の業績と結びついている」という採算意識を社員が持つきっかけになります。

    粗利益

     粗利益は、売上から商品やサービスの仕入れ原価を引いた利益のことです。例えばたこ焼きであればタコや野菜などの食材が該当します。また教育関係事業などで講師を外注しているときは、その講師謝礼も仕入れ原価と同じ扱いになります。仕入原価とは、自社の商品やサービスを作るために外部のメーカーや問屋から調達してきた価値です。その仕入原価を売り上げから差し引いた残りが粗利益です。つまり、粗利益とは自社が生み出した価値の大きさそのものを表し、同時にこれは人件費・経常利益の源泉となるのです。

     したがって会社と社員双方の利益を実現するためには、これを賄う目標粗利益額を明確に定めることが求められます。目標粗利益額は会社と社員が追うべき共通目標となるのです。必要粗利益額を達成しなければ、会社の利益も社員の利益も達成されないという事実を社員も認識できるようになるので、やる気だけでなく採算意識、業務改善意欲、スキル向上意識も俄然高まります。

    売上高

     これは殆ど説明不要ですね。ただ、ここまでの目標指標を見てきた通り、売上高は必要粗利益目標を満たせる水準であることが求められる、ということにお気づき頂けたことと思います。売上目標を持っている会社は多いですが、売上目標だけだと利益や総額人件費をいくら確保できるかが分かりません。売上目標が利益や総額人件費と連結していることで、ここまで述べたような会社と社員双方の目標達成意欲が高まります。

    まとめ

     今日は「経営に直結する会計力」というお題についてのアンサーをお伝えしました。

    1. 経営に必要な数字は「過去の実績」ではなく「未来の目標数字」
    2. 最低限描くべき目標数字は「経常利益・総額人件費・粗利益・売上高」
    3. 特に会社と社員双方の利益の源泉である「目標粗利益額」の設定が重要
    4. 数字目標を正しく設定出来れば、会社も社員も一丸となって目標に向かって走れる風土を醸成できる

     数字は無機質なものですが、使い方次第で人を動機づけながら事業活動の発展に活かすことができる、貴重な情報となります。事業発展に直接的に活かせる真の会計情報活用力を身に付けて頂けたらと思います。


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