自社の持続的な競争優位の源泉を探る

サマリー
1.企業の持続的な競争優位の源泉を探る手法にVRIO分析があります。
2.VRIO分析は単純明快で分かりやすいフレームワーク。強みの中でも「競合他社に簡単に真似できないものか?」「自社の組織全体で共有されている強みか?」」という2つの質問にYes!と答えられる強みが、持続的な競争優位の源泉と位置付けられます。
VRIO分析
企業経営では「自社の強み」を徹底的に活かすことが成功のポイントと言われています。強みの中でも、ある条件を満たした経営資源は持続的競争優位の源泉となり、企業に長期的な利益をもたらす経営資源となります。
強みがどれだけ強く希少価値があるのかを判定するのに、VRIO分析という手法があります。非常に単純明快なフレームワークですが、その分使い勝手がよく、今の強みだけではなく今後強化できそうな強みも明らかになります。
1.その強みは、プラスの価値を与えるものだろうか(経済的価値)。
2.その強みを持っている企業は少ないか(希少性)?
3.その強みを他社が真似ようとした時、簡単に真似できないか(模倣困難性)?
4.その強みは組織として共有されているか(組織)?
これらの問いに答えた結果から、その強みを
「競争劣位」
「競争均衡」
「独自の競争優位」
「持続的競争優位」
に分類します。
これらを一覧にすると下記のようになります。
順番 | 問い | 価値 | 強みの分類 |
1 | その強みは、プラスの価値を与えるものだろうか | 経済的価値 | 競争均衡 |
2 | その強みを持っている企業は少ないか | 希少性 | 一時的競争優位 |
3 | その強みを他社が真似ようとした時、簡単に真似できないか | 模倣困難性 | 独自性のある競争優位性 |
4 | その強みは組織として共有されているか | 組織化 | 持続的競争優位 |
最も強みとして価値があるものは企業に長期的な利益をもたらす「持続的競争優位」と位置付けられます。
分析事例
VRIO分析の使用例をご紹介します。最寄品の卸販売を営む企業様のご支援例です。こちらの企業様の強みは豊富なチャネルを持っていることと、新商品開発のスピード感でした。
社内では社長様の意思決定が早く次々と新商品開発を行い、絶えず新商品をリリースすることで市場から一定の評価を得てきました。
また、営業部や企画部では時折市場調査も実施されています。
多くの新製品により棚卸資産が増加傾向ですが、自動倉庫システムの導入などで在庫管理の効率化を図っています。
「豊富なチャネル」の判定
1番目の問いに対しては、日用品で広いチャネルを持っていることは価値あることですのでここはクリア。
2番目の問いに対しては、これはチャネルの広さにおいて競合を圧倒していたためクリア。
3番目の問いに対しては、チャネル形成は長年の信頼関係構築や業界独特の商習慣など、簡単に他社が構築できない要素から成り立っていたためクリア。
4番目の問いに対しては、組織全体でチャネル形成及び維持に向けて能力を発揮している状況だったためクリア。
以上から、「豊富なチャネル」は「持続的競争優位」であると言えます。
「迅速な商品開発」の判定
1番目の問いに対しては、その姿勢が流通業者から評価されていたためクリア。
2番目の問いに対しては、スピーディに開発が進められる組織体制があり、他社を凌駕する商品開発数をこなしているためクリア。
3番目の問いに対しては、素早い開発を可能にするノウハウや生産体制のブラックボックス化や、下請けとの長年に渡る信頼関係などによるものであり、他社には簡単に真似できないためクリア。
4番目の問いに対しては、実はこの開発スピードを可能にしている中核能力が社長様の社内社外への影響力だったため、仮に社長様が会社を去った場合、この牙城は一気に崩れる危険性を孕んでいました。したがって組織としては共有されていない強みであり、「独自性のある競争優位」と位置づけられます。
まとめ
このように強みを1つずつ分析していくことで、自社の真の強みが浮き彫りとなります。

強みの程度を判定していくことで、「何が最も大きな強みなのか」が分かるだけでなく、強化したい強みと強化する方向性(模倣困難性を高めるのか、組織化を推進するのか)が明らかになります。
ぜひ強みの洗い出しの際の参考にして頂けたらと思います。
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