ポジショニング~市場での自社のポジションを明確にする~

サマリー
- ポジショニングとは、ターゲット市場で自社の商品やサービスをどのように認識されたいのか、を明確にすること、一言でいえば市場における商品やサービスの「立ち位置」を決めることです。
- ポジショニングを行うと、特定市場における商品サービスの認知度やブランドロイヤルティ向上、競合他社との差別化、マーケティング戦略の有効性について自社内で納得感を得られやすい、などのメリットがあります。
- ポジショニングを行うには、ポジショニングマップを作成します。
ポジショニングとは
ポジショニングは、マーケティングプロセスにおいて「ターゲット顧客層を特定」した後に、自社のポジションを明確にするために行います。
※マーケティングプロセスについてはこちらの記事をご参照ください→マーケティング戦略立案手順
ポジショニングの目的
ポジショニングとは、ターゲット市場で自社の商品やサービスをどのように認識されたいのか、を明確にすることです。一言でいえば、市場における商品やサービスの「立ち位置」を決めることです。
ポジショニングは情報過多社会、製品のコモディディ化が進んでしまう現代において益々重要性を増しています。モノやサービスが溢れ、それに付随する情報が溢れる現代。商品の立ち位を明確にし、その場所で旗を振り続けなければ、だれからも商品を認知してもらえず、当然興味や購買意欲を刺激することもできません。
ポジショニングの期待効果
ポジショニングを明確にすることで、次のような期待効果を得られます。
市場における商品やサービスの認知度やブランドロイヤルティ向上
ポジショニングとは立ち位置を決めることです。これは顧客の視点から見れば「○○と言えば△△」と認知されることと言えます。
例えば「高級バッグと言えば△△」「安い中華料理屋と言えば△△」「大盛りラーメンと言えば△△」「港区の高級和菓子店といえば△△」「お茶と言えば△△県」「うどんと言えば△△県」・・・この△△の中にあなたが思いついた商品や県は、明確なポジショニングが出来ていると言えます。
このように、細分化された特定市場のなかで真っ先にイメージされる存在になることで認知度を獲得し、地位を高めることで売上アップに繋がっていきます。
ターゲット市場における、競合他社と自社商品の差別化ポイントの明確化
ポジショニングは、後述するように競合他社との相対的な関係をポジショニングマップに表します。そのため競合他社と自社商品の違いは何なのかが整理され、差別化ポイントが明確になります。
関連部門に対して、マーケティング戦略の有効性について納得感を得られやすい
これはコンサルティング現場で度々感じることですが、ポジショニング・マップは社内の関連部署に戦略の有効性を納得してもらうのに非常に効果のあるツールです。
マーケティング戦略は企画部署だけでなく営業部、製造部、技術部なども巻き込む社内横断的な戦略です。したがって関連部署の納得感が得られないと実行段階で躓いてしまうことがあります。そんな時、1枚のポジショニングマップに自社商品の立ち位置を整理することで、関連部門の誰が見ても「ウリ」や「競合会社との違い」が直感的に認識でき、納得感を得られやすいです。
また、仕入れ先や協力企業に対してもポジショニングマップを見せることで、当社が顧客市場でどんな立ち位置を取ろうとしているかが共有でき、同じ目線で協力を仰ぐことが出来るようになる効果もあります。
ポジショニング・マップ
ポジショニング・マップとは
ポジショニングを明らかにするには、次のようなポジショニングマップを作成します。ポジショニングマップでは、顧客にとって購買を決定する重要な要因を2軸にとって、自社と競合の商品・サービスをマッピングします。
2軸の考え方
ポジショニングマップ作成で重要になるのが2軸の取り方です。どのような視点で2軸を取るのか、これは幅広視点から考えていく必要があります。
軸の取り方には様々な要素があります。以下に一例を紹介します。
品揃え | 広く浅く(総合)⇔狭く深く(専門) |
価格 | 低価格⇔高価格 |
性別 | 男性⇔女性 |
年齢 | 子供⇔青年⇔高齢者 |
提供形態 | 個人(マンツーマン)⇔グループ |
購買方法 | オンライン⇔オフライン |
情緒価値 |
重厚⇔軽快 甘い⇔辛い エレガント⇔実用性 刺激⇔落ち着き ラグジュアリー⇔手軽 新奇的⇔伝統的 カッコいい⇔かわいい |
機能価値 |
教育⇔遊び 大きい⇔小さい 軽量⇔重量 |
行動基準 |
ヘビーユーザー⇔ライトユーザー 初心者⇔上級者 持ち運び⇔室内利用 |
軸の取り方は商品やサービス特性、顧客の求める価値、競合によって千差万別ですので、その都度様々な軸を出来るだけ沢山洗い出し、検討していきます。
軸の取り方で1つ留意しておくポイントは、極力対義語、反対語になるような軸をとることです。例えば「新奇的⇔伝統的」などです。
逆に「良い⇔悪い」という軸になってしまう要素はあまりポジショニングでは使用しません。この代表的な要素が「品質(良い⇔悪い)」です。
ポジショニングマップは、新しいポジション領域を見つけて立ち位置を明確にするために作成します。現状のポジショニングをマッピングする際に、たしかに自社と競合の商品間で品質などの高低があると思いますが、品質高低軸でマッピングして仮に「品質が低い」ところに空白地帯があるからといって、そこに自社をリポジショニングするわけにはいきません。
こういう時は、軸を「品質」ではなく、「価格(高価格帯⇔低価格帯)」や「提供価値(手軽⇔密着)」などに置き換えるのが有効です。
ポジショニング・マップ作成手順
現状のポジショニングマップを作成する
あるサービス業のポジショニングの事例を交えてご説明していきます。
まず、現状のポジショニングマップを作成します。1つ目の図は縦軸に「価値」をとり、横軸に「職業」を取っています。2つ目の図は縦軸に「年齢」、横軸に「職業」を取っています。このように、1つのサービスのポジショニングを考える時に2パターン作成すると、よりポジションが明確になりますのでお勧めします。
解釈の仕方
自社と競合他社が重なっているということは、そこで競争が発生しており、顧客視点で見た時に明確な差別化が図れていないということになります。
また、自社のポジションがマップ全体に行き渡っている場合(2つ目の図)、顧客視点から見ると特徴がないサービスに見えている可能性があります。
ポジショニング再構築
現状のポジショニングの解釈を行い、その結果と自社の経営資源(強み)を掛け合わせて、どこに自社をポジショニングし直すか(リポジショニング)を考えます。次の図がリポジショニングした図です。
この企業の強みであるファッションセンスと技術力の高さを活かして、空白地帯である「高価格で顧客密着型の最先端ファッションサービスを40代以降のキャリアウーマンに提供」する立ち位置へリポジショニングしました。
まとめ
ポジショニングを明確にすると、特定市場における商品サービスの認知度やブランドロイヤルティ向上、競合他社との差別化、マーケティング戦略の有効性について自社内で納得感を得られやすい、など様々なメリットがあります。
また、ポジショニングでは2軸をどのように取るかがその成否を左右します。業種や製品特性、顧客特性に応じて様々な角度から出していくことが大切です。当記事でご紹介した軸の取り方もご参考にして頂ければと思います。
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