「許容固定費」の考え方が利益を生み出す

利益を出す近道
利益を出す単純かつ最も確実な方法は、固定費をコントロールすることです。固定費とは売り上げの増減に関わらず一定額発生する費用です。代表的な固定費には次のものがあります。
・人件費(一般的に最も大きい)・減価償却費・地代家賃・支払利息・広告宣伝費・その他販管費目 |
利益改善のコントロール難易度
利益と費用の関係は次の図のようになります。
この図が示す通り利益を残すためには、
①売上高を増やす
②変動費を抑える
③固定費を抑える
という3パターンのみということになります。次にこれら3つの要素のコントロール難易度を考えてみます。各要素をビジネスフローに置き換えてみると、次のようになります。
売上と変動費は、それぞれ顧客と仕入れ先という外部から発生するものです。それに対し固定費は自社内部で発生する費用ということになります。外部環境と内部環境のどちらがコントロールしやすいかを考えれば、自ずと内部環境から発生する固定費が最もコントロールしやすく、外部環境から発生する変動費や売上はコントロール難易度が高いということが分かります。
つまり、利益改善にはまず固定費のコントロールから始めることが最も確実である、ということになります。
固定費は放っておくと膨張する
固定費は抑制を意識しておかないと、事業規模が拡大していなくても増加していく傾向にあります。
例えば代表的な固定費である人件費。人員数を考える場合、現場の作業内容と負荷から考えていくとほぼ確実に「ヒトが足りていない」という結果になります。社員からしつこく「ヒトを増やしてほしい」とお願いされたことのある社長も多いのではないでしょうか。
しかも大抵の場合様々なセクションから「ヒトを増やしてほしい」という声が上がります。それに応えて増員すれば当然人件費が膨れ上がることとなります。
そしてその増えた人件費をカバーするためには、売上を増やし、変動費を減らす(=粗利を増やす)しかありません。しかし前述のとおり、外部環境の影響が大きい売上と変動費はコントロールすることが難しいのです。ヒトを増やしたからといってその分売上増加を期待するのは、リスクが大きい判断と言えます。
許容固定費の考え方
そこでお勧めしたい考え方が「許容固定費」という考え方です。
許容固定費=目標粗利益―目標税前利益 |
上記の算式が示す通り、許容固定費とは目標税前利益を達成するために「使える固定費はいくらまで」を先に決めてしまうという発想です。使える固定費の上限を予め決めておくということです。
例えば適正な人件費はいくらか、という先程の例に絡む問題についていえば、適正人件費とは「目標利益を残せる人件費」が適正と考えられます。今の業務を回すのに必要な人件費が適正人件費であるという考え方もありますが、それによって目標とする利益が達成できなかったり赤字になることがあれば、それを適正ということはできません。
人件費を始めとする固定費は、このような発想のもと利益を残すために許容できる上限固定費を定めておき、その中で「工夫」することが大切な考え方になります。
「工夫」とは大きく次の2点、
●根本的な業務プロセスの見直し
●資源の有効配分
を検討することになります。
業務プロセスの見直し
先述の人件費膨張例は、現場の作業内容と負荷をベースに人員数を検討した結果「ヒトが足りない」となってしまった例です。現在の仕事のやり方から発生する問題を積み上げる帰納的な発想で考えると、ほぼ必ず「ヒトが足りない」という結論となります。
これが、「使える人件費は○○円まで」と決まっているとどうなるかというと、「残業」も「増員」もできなくなります。その状態で仕事を回すためには、今の仕事のやり方を変えるという「業務プロセスの変革」を意識せざるを得なくなります。
資源の有効配分
使える経営資源「ヒト・モノ・カネ」の分量の上限が決まっているということは、最大限大きな収益を生み出せるところに集中的に投下していく判断が求められます。
決まった資源量を、最大限の利益を生み出せるところに集中投下するということは、すなわち「戦略」という概念そのものです。
許容固定費の概念を用いることは、戦略を考え直さざるを得なくなるのです。もし許容固定費内で利益達成が難しいのであれば、それは戦略そのものに問題があるという可能性が高いです。
利益を残すための固定費の上限を決めてしまい、その中で事業を回していくという発想が先に立つことで、戦略をよりブラッシュアップし、実現可能性の高い計画の創出に繋がるのです。
まとめ
「許容固定費」の考え方を用い、残すべき利益から固定費の上限を決めてしまうことで、限りある経営資源の有効活用、経営戦略のブラッシュアップ、業務プロセスの高度化を考えざるを得なくなります。
このような強制力を使うことで、より骨太で強い収益・事業構造を確立することに繋がっていきます。
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