部門別採算管理制度の設計手順

※部門別採算管理制度の意義や目的は、こちらの記事をご参照ください。→
設計手順
部門別採算管理制度の設計手順は次のようになります。
組織展開図の設計
企業にとっての採算単位を決める作業です。いわゆる「組織図」を作成するイメージです。実際に組織図と全く同じになることが多いですが、必ずしもそうではありません。
これはあるご支援先の企業様の組織図ですが、例えば部門内の人数が少ない場合や、コスト管理がメインとなるコストセンター(総務人事や経理部)については、部門別採算管理制度の組織展開図ではまとめたほうが良い場合もあります。この事例では、人数が少なく細分化するメリットがさほどなかった管理本部を1つにまとめています。
採算単位の性格付け
次に、組織展開図で示された採算単位に性格付けを行います。性格付けとは、その採算単位が売上に責任を単位なのか、それともコストのコントロールに責任を持つ単位なのか、によって、次の3つに分類されます。
先程の組織展開図に性格付けを行うと次のようになります。
ここで、製造部やこの事例での技術部について補足します。製造部は直接販売して売り上げを立てる部門ではありません。しかし、製造部門も社内取引として営業部や販売部に対して販売する、という考え方のもと、PCとして扱うことが多いです。単にコストコントロールという意識付けではなく、利益管理という意識を部内に醸成したほうが、社内全体での利益意識が向上するからです。
採算管理表の設計
次に採算管理表の設計を行います。全採算単位一覧と各採算単位別一覧を作成します。予算と昨年実績ランを設け、それぞれに対する差異を一覧できるようにしておくと、業績の進捗状況が管理しやすくなります。次の表は、「レベル3技術サービス事業部」の採算管理表の例です。
運用ルールの設計
次に運用ルールの設計を行います。管理会計の1つである部門別採算管理は、財務会計と違い、ルールを企業独自に決めることが出来ます。部門別採算管理制度の目的である損益管理、人材育成、目標管理等さまざまな目的を達成できるよう、企業の実情に合わせて柔軟なルール設計を行います。
主に大きなルールは3つあります。
社内取引
内部振替に関するルールです。部門間で行われる製品やサービスの受け渡しを、対外的な取引と同様に捉えて、社内取引として取引条件をルール化します。さきほどの製造部門から営業部門への製品を社内で販売する、というのも社内取引にあたります。その社内取引の仕切り価格をルール化します。
費用の負担
在庫額や金利の負担をどのように按分するか、また、PCC、CCのコストをどの部門にどのように按分するか、というルールを決めます。
利益責任
階層レベルに応じた責任利益をどのように決めるかというルールです。これはどのレベルの長が利益のどこまで責任を持たせるかということを明らかにするもので、責任権限一致の原則に基づき、ルール化していきます。
システムへの移行
部門別採算管理表を全社、部門ごとに、階層に分けて設計し連動させることで、会計システムに取り込むことも可能となります。
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